プレスリリース
(研究成果) 農業機械データを一元管理し、農業経営の効率化を実現するデータ連携の標準仕様(農機OpenAPI仕様)等を策定

情報公開日:2022年6月 1日 (水曜日)

農研機構

ポイント

 農研機構は、生産現場で農業者が使いやすいデータ連携を実現するため「スマート農業総合推進対策事業のうち農林水産データ管理・活用基盤強化事業」の取組成果として、農機・機器のAPI1)仕様書等の各種文書を公開しました。本成果物は、メーカー間の垣根を越えたデータ連携の実現、農業者のデータ利用環境の向上につながると期待されます。

概要

 農研機構(本部:茨城県つくば市)では、農業機械(農機)メーカーの枠に限定されることなく、農業者が農機・機器から取得できる作業記録等のデータを一元管理できるようにするため、農機・機器メーカー、ICTベンダー、業界団体等を構成員とした「農機API共通化コンソーシアム」を令和3年に設立し、農林水産省の「スマート農業総合推進対策事業のうち農林水産データ管理・活用基盤強化事業」において必要な検討を行ってきました。
 この度、事業の成果物として、メーカー各社がAPIを実装する際の基準となる「農機OpenAPI仕様書」、安全なデータ連携を支援する「API接続チェックリスト」、API利用契約締結時のひな型となる「農業分野におけるAPI利用規約の条文例」及びこれら成果の要約版である「成果報告書」を策定しました。農機・機器メーカー、ICTベンダー等がこれらを活用し、APIの実装及び利用に係る各種手続きを行うことで、業界でのデータ連携の加速化、農業者のデータ利用促進が期待されます。本コンソーシアムでは、農機OpenAPI仕様に沿ったAPI群を農研機構が運営する農業データ連携基盤(WAGRI2))などを通して提供予定です。
 本成果物は、以下に記載の農機API共通化コンソーシアムのホームページからどなたでもダウンロードできます。

参考

農機API共通化コンソーシアムのホームページ
URL: https://www.naro.affrc.go.jp/org/brain/iam/API/index.html

関連情報

予算 : 農林水産省補助事業(スマート農業総合推進対策事業のうち農林水産データ管理・活用基盤強化事業)

問い合わせ先
研究推進責任者 :
農研機構農業機械研究部門 所長 天羽 弘一
同農業情報研究センター センター長 中川路 哲男
※2022.6.2 修正
研究担当者 :
同農業機械研究部門 機械化連携推進部 機械化連携推進室
室長 大森 弘美
広報担当者 :
同 研究推進部 研究推進室 広報チーム
チーム長 藤井 桃子

詳細情報

社会的背景

 様々なスマート農業技術の実用化や現場導入の推進に伴い、生産現場ではメーカー間の垣根を越えて作業記録などのデータを相互に連携、一元的に管理・分析することで、経営改善に活かしたいというニーズが高まっています。
 また、規制改革推進会議3)においても、自機位置、作業記録等のデータを取得するトラクター、コンバイン等の農機の使用に当たり、農業者がこれらのデータを当該農機メーカー以外の作ったソフトでも利用できる仕組み(オープンAPI)の整備を令和3年度までに行う方針が示され、農林水産省において、令和3年2月に「農業分野におけるオープンAPI整備に関するガイドラインver1.0」が定められました。
 農林水産省の政策目標「2025年までに農業の担い手のほぼ全てがデータを活用した農業を実践」の実現に向け、農業データ利活用に関する各種の取組が進められております。

事業の経緯

 このような背景の下、農林水産省において、農業データを連携・共有するための環境整備を支援する補助事業「スマート農業総合推進対策事業のうち農林水産データ管理・活用基盤強化事業」が令和3年度から開始されました。
 農研機構では、上記ガイドラインを始めとする、国の行政機関が公表した各種指針を踏まえつつ、データ駆動型農業の推進役として、農機・機器メーカー、ICTベンダー、業界団体等を構成員とした「農機API共通化コンソーシアム」を令和3年4月20日に設立し、上記事業への取組を開始しました(令和3年8月11日プレスリリース、https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/iam/143389.html)。
 本コンソーシアム(図1)では、ほ場農業機械、穀物乾燥調製施設及び施設園芸機器の3分野についてワーキンググループ(以下、WG)を設け、データを一元的に扱うことを可能とするために必要な事項について専門的な立場から検討を行い、各WG及び業界の有識者や農業者を招へいした事業検討委員会での協議を経て、以下の成果を取りまとめました。

事業成果物

  • ① 成果報告書
     事業成果の要約版として、各種成果物の位置付け、成果の概要及びコンソーシアムの活動記録等について取りまとめたものです(図2①)。
  • ② 農機OpenAPI仕様書
     農機・機器データの利用しやすさの向上及び農機・機器メーカーの迅速なAPI実装を支援するために作成しました。仕様書は、ほ場農業機械編、穀物循環式乾燥機編、施設園芸機器(環境データ)編で構成されています。農機・機器メーカーが標準仕様に沿ってAPIを実装することにより、ICTベンダーはメーカー間の仕様の違いを気にすることなくAPIで取得できるデータ項目に関する定義の一貫性を担保することができます。これにより、農機・機器データの収集・分析が容易になり、農業者の利便性の向上やソフトウェアの高機能化につながります(図2②)。
  • ③ API接続チェックリスト
     API提供事業者(農機・機器メーカー等)とAPI利用事業者(ICTベンダー等)の間における安全なデータ連携及びAPI実装後のセキュリティ体制のモニタリングを支援するために作成しました。本チェックリストは、フォーマットとその解説書で構成されており、利用者間で必要な項目を調整の上、契約締結前の確認や契約締結後の確認事項に関する定期的なモニタリング等での活用を想定しています(図2③)。
  • ④ 農業分野におけるAPI利用規約の条文例
     農機・機器メーカーがAPIを公開する際に準備する利用規約のひな形及びその解説を作成しました。契約交渉時の論点整理や利用規約の策定業務の効率化に役立ちます(図2④)。

以上の成果物は、以下のウェブページからどなたでもダウンロードできます。
農機API共通化コンソーシアムのホームページの成果物へのリンク
https://www.naro.affrc.go.jp/org/brain/iam/API/index.html#documents

今後の予定

 今後、本事業で得られた各種成果を活用し、農機・機器メーカーが農機OpenAPI仕様に沿ったAPIを実装し、農研機構が運営する農業データ連携基盤WAGRIなどを通して提供していく予定です。
 本コンソーシアムでは、成果の普及に努めるとともに、今後も農業者が農機・機器の各種データを容易に利用できるよう、業界関係者が一体となって、機器の種類やデータ項目の拡充等、データ利活用に向けた各種環境整備に取り組んでまいります(図3)。

用語の解説

API
アプリケーションプログラミングインタフェース(Application Programming Interface)の略で、ソフトウェア機能の一部をインターフェイスとして公開し、他のソフトウェアと機能を共有できるようにするものです。
WAGRI
WAGRIとは、WA(和)+AGRI(農業)の造語です。農業者へサービスを提供するICTベンダーや農機メーカーに対して、APIを通じてデータやプログラムの処理結果を提供し、また、事業者間でのデータ共有やシステム連携を可能とするプラットフォームの役割を担います。(https://wagri.naro.go.jp/)
規制改革推進会議
経済に関する基本的かつ重要な政策に関する施策を推進する観点から、内閣総理大臣の諮問に応じ、経済社会の構造改革を進める上で必要な規制の在り方の改革に関する基本的事項を総合的に調査審議する内閣府に設置された会議体です。

参考資料

「農業分野におけるオープンAPI整備に向けた検討会」URL
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/smart/openapikento.html
「農業分野におけるオープンAPI整備に関するガイドラインver1.0」URL
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/smart/attach/pdf/openapi-16.pdf

参考図

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図1 農機API共通化コンソーシアムの実施体制
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図2 成果物一覧
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図3 API利用の流れと成果物の位置付け