茶樹を加害するハマキガ類に対する新交信攪乱剤


[要 約]
 チャノコカクモンハマキとチャハマキの防除を目的とする従来の交信攪乱剤は,10年以上連続して使用されてきた地域の一部の茶園で効果が低下している。そこで,これに代わるものとして両種の性フェロモン関連化合物6成分から成る新しい交信攪乱剤を開発した。
[担当研究単位]農業環境技術研究所 環境生物部 昆虫管理科 昆虫行動研究室
[部会名] 農業環境・農業生態
     総合農業・生産環境
[専 門] 作物虫害
[対 象] 昆虫類
[分 類] 普及

[背景・ねらい]
 茶樹の主要害虫であるチャノコカクモンハマキおよびチャハマキを対象として(Z)-11-テトラデセニールアセタートを有効成分とする交信攪乱剤が1983年に農薬登録された。本剤は,今後,減農薬等の環境保全型農業においてさらに重要性が増すと考えられる。しかし,10年以上連続使用されている地域において,両種の本剤に対する感受性低下が懸念された。そこで感受性低下の実態解明と,感受性低下を示す個体群および感受性の個体群の両者に有効な交信攪乱剤の開発を行った。
[成果の内容・特徴]
  1. 従来の交信攪乱剤(ハマキコン L40)は,98年に埼玉県入間市茶園(1ha)のチャノコカクモンハマキ個体群に有効だが,静岡県島田市茶園(2.2ha)の個体群には効果がなかった。この明らかな差異から本剤に対して感受性の低下した個体群が確認された(図1)。
  2. 新交信攪乱剤はチャノコカクモンハマキおよびチャハマキの性フェロモン関連化合物6成分((Z)-11-テトラデセニルアセタート,(Z)-9-テトラデセニルアセタート,(Z)-9-ドデセニルアセタート,11-ドデセニルアセタート,10-メチルドデシルアセタートおよび(Z)-11-テトラデセノール=76:15:4:2:2:1)の混合物である。新交信攪乱剤250本/10aおよび従来の交信攪乱剤500本/10aを茶園へ均等に設置し,その効果を両種の発生予察用フェロモントラップによる誘殺数で判定した。
  3. 新交信攪乱剤は,99年に入間市茶園(1ha)および島田市茶園(1ha)のチャノコカクモンハマキおよびチャハマキの両種個体群に対して良好な交信攪乱効果を示し(図2,3),幼虫の密度低減効果も認められた。
[成果の活用面・留意点]
  1. 新交信攪乱剤の設置は年1回,250本/10aを基準とし,成虫の発生前に行う。
  2. 交信攪乱効果の簡易な判定には発生予察用フェロモントラップによる誘殺数を調査し,誘殺されていないことを確認する。

具体的データ


[その他]
研究課題名:性フェロモン利用を核としたハマキガ類等害虫の総合防除技術の確立
予算区分 :環境研究〔持続的農業〕
研究期間 :平成11年度(平成11〜13年度)
協  力 :信越化学工業(株),(株)トモノアグリカ
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