中国の主要な水稲栽培地帯からのメタン発生量


[要 約]
 世界の水田面積の約25%を占める中国の主要な水稲栽培地帯の8地点における年間メタン発生量(ただし栽培期間中のみ)は,1.6〜148gCH4m-2y-1で地点および年により大きく異なった。南西部の重慶では,排水が悪く圃場が湛水していた非栽培期間中のメタン発生量は,最大36.2gCH4m-2であった。
[担当研究単位]農業環境技術研究所 環境管理部 資源・生態管理科 影響調査研究室
[部会名] 農業環境・地球環境
[専 門] 環境保全
[対 象] 稲類
[分 類] 研究

[背景・ねらい]
 世界の水田からのメタン発生量を正確に推定するためには,世界全体の水稲栽培面積の約25%を占める中国において,実測に基づいた発生量を推定することが必要である。そこで,中国科学院南京土壌研究所と共同で,1993〜1997年の5年間,中国の主要な水稲栽培地帯の8地点(図1)で,クローズドチャンバー法による同一手法で水稲栽培期間中のメタンフラックスを測定した。同一地点では1〜3年の間にわたり測定を継続した。なお,各地点では,慣行栽培体系と異なる処理区も設定して,メタン発生量の比較を行った。また,排水が悪く湛水していた重慶では,非栽培期間中のメタンフラックスも測定した。
[成果の内容・特徴]
  1. 水稲栽培期間中のメタン年間発生量は地点及び年によって異なり,その範囲は1.6〜148gCH4m-2y-1であった。封丘,句容,南京及び蘇州では10gCH4m-2y-1以下と少なく,重慶,長沙では36〜87gCH4m-2y-1と大きく,鷹潭では148gCH4m-2y-1(1993年)と全地点中で最大であった(表1)。
  2. 最南部の広州の水田圃場では,一年中で畑作期間の長い圃場(水稲―野菜―野菜)のほうが,短い圃場(表1の圃場)よりも,翌年前期の水稲栽培期間中のメタン発生量は少なかった(表1)。
  3. 重慶では,排水状態が悪く湛水していた非栽培期間中のメタン発生量は最大36.2gCH4m-2と大きかった。また,栽培期間中のメタン年間発生量が多かった鷹潭の底部では,非栽培期間中でも排水されにくく湛水している期間が長かった。
  4. 中国の水田圃場で非栽培期間中(おもに冬期)の排水が悪い地域は長江以南に多く,その面積は中国の全水稲栽培面積の10%強であった。この地域からの栽培期間中及び非栽培期間中のメタン発生量が中国全体の水田からのメタン総発生量に大きく寄与していると推測された。
[成果の活用面・留意点]
  1. これらのデータをもとに中国の水田全体からのメタン発生量を推定する手法を開発中である。
  2. IPCC(気候変動に関する政府間パネル)等における,世界の水田からのメタン発生量の推定に貢献する。

具体的データ


[その他]
研究課題名:アジアの農耕地からのメタンと亜酸化窒素の発生及び抑制技術に関する研究
予算区分 :経常,環・地球環境〔温暖化抑制〕
研究期間 :平成11年度(平成7〜11年度)
発表論文等:Cai, Z.C., H. Tsuruta, K. Minami: Methane emission from rice paddy fields in China:
      I. Measurements and influencing factors, Journal of Geophysical Research, 105(2000)
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