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技術マニュアル
農薬の生態リスク評価のための種の感受性分布解析

マニュアル(表紙)

(研)農業環境技術研究所
化学物質環境動態・影響評価リサーチプロジェクト

農薬の生態リスク評価のための
種の感受性分布解析

Ver. 1.0 (2016年3月)

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農薬は安定した食物生産に有効な資材であるが、農耕地系外に流出した場合には非標的生物へ悪影響を与える懸念がある。特に日本の農業は水田を中心としており、そこで使用された農薬は灌漑水を通じて河川に流出しやすいという特徴を持っている。そこで、農薬取締法に基づく「水産動植物の被害防止に係る農薬登録保留基準」により、農薬の水産動植物に対するリスク評価に基づいた基準値の設定が順次進められている。

現行の制度では、水産動植物への影響について、農地から流出した農薬の環境中濃度が指標生物種に対する毒性値を超えるかどうかを評価している。しかし、従来の農薬が広範囲の生物に毒性を示した一方、近年、より選択性の高い農薬が開発され、ごく特定の生物種にしか効果のない農薬が使用されるようになってきた。この場合、従来の代表的な指標生物種に対する試験では毒性が現れないため、生態系の中で影響を受けやすい生物種への影響を把握できないことが懸念される。一方欧米諸国では、統計学的な手法を活用して毒性評価や環境中濃度の予測の課題に対応するため、定量的かつ信頼性の高い高度評価手法が検討され、リスク管理施策への活用が進められている。幅広い生物種への影響を評価できること、影響を定量化できること、これまで行われてきた室内毒性試験の結果を有効活用できること、等の点から種の感受性分布(Species Sensitivity Distribution, SSD)という概念を用いて生物多様性への影響を評価することが有効であると考えられた。

本技術マニュアルは、この種の感受性分布を活用して解析を積み重ね、手法論的な検討を行ってきた結果を、技術的な観点からまとめたものである。本技術資料によって、種の感受性分布に対する理解や活用機会が広がり、リスク評価やリスク管理がより高度化されることを期待する。

問い合わせ先:

(研) 農業環境技術研究所 永井孝志

Tel: 029-838-8148(代表)

E-mail: nagait(at)affrc.go.jp

目次

はじめに

エグゼクティブサマリー

目次

1. 種の感受性分布(SSD)とは

1.1. 現行の農薬の生態リスク管理制度と統計学的手法の必要性

1.2. 種の感受性分布

1.3. SSD の発展と議論の歴史

1.4. SSD を扱った公的文書、ガイダンス等

1.5. SSD の他国における活用事例

2. 生態毒性データの収集と評価

2.1. 既存の生態毒性データベース

2.2. 生態毒性データベースの活用

2.3. 農薬の生態毒性情報の収集と信頼性評価

2.4. 農業環境技術研究所の農薬生態毒性データベース

3. SSD 解析

3.1. 確率分布と SSD

3.2. SSD の解析方法

3.3. 主な水稲用農薬の SSD 解析結果

3.4. HC5 と水産保留基準

3.5. SSD とメソコスム試験の結果の比較

3.6. SSD を活用した生態リスク評価

4. SSD の活用 〜発展編〜

4.1. SSD のためのデータ数と生物種

4.2. データが少ない場合の SSD 推定方法

4.3. 複合影響の計算方法

4.4. SSD を用いた生態リスク評価の高度な活用

4.5. 野外生態系におけるSSD の検証

4.6. SSD を用いたリスク評価結果をより良く解釈するために

5. 参考文献

6. 付録

6.1. 略語集

6.2. SSD と生態リスクの計算ファイル

SSD 計算用 Excel ファイル
SSDcalc.xlsx のダウンロード

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