生物系特定産業技術研究支援センター

《こぼれ話31》半炭化処理で長持ちする木質舗装材誕生

2021年12月24日号

木材チップを半炭化処理して固めた木質舗装材をご存じでしょうか。従来の木質舗装材よりも耐久性が高い画期的な舗装材です。森林総合研究所などが開発しました。木質舗装材は、アスファルト舗装に比べてクッション性に優れ、快適に歩行できることに加え、使った後は燃料としても利用できます。地域に眠る未利用木材資源を有効活用することで、地場産業育成や雇用創出への貢献も期待できます。

半炭化処理で木質舗装材の弱みを克服

公園や遊歩道などで木材チップを樹脂などで固めた舗装を見たことはないでしょうか。このような木質舗装は軟らかく、歩きやすい反面、木材チップがはがれたり、腐ったりして、長持ちしないといった課題がありました。

そうした課題を解決するために森林総合研究所、奈良県森林技術センター、ニチレキ株式会社などが開発したのが、木材チップを半炭化処理して固めた木質舗装材です。

半炭化処理とは、通常の炭化温度(600~1,000℃)よりもずっと低い温度領域(250℃)で酸素のない条件で加熱し、木材の分解をできるだけ抑えながら熱処理する技術のことです。コーヒー豆の焙煎と似ていて、「木を焙(ほう)じる」とも言います。

写真1: 半炭化処理されて
黒っぽくなった木材チップ
(奈良県森林技術センター提供)

半炭化処理木質舗装材は、半炭化処理した木材チップ(写真1)を、石や砂、セメント、硬化剤、アスファルト乳剤(石油アスファルトの粒子を分散させた黒褐色の液体)などと混ぜて造ります。木材チップの配合割合は約7割です。

野外試験で耐久性アップを実証

森林総合研究所や奈良県森林技術センターなどは、宮城県、奈良県、兵庫県、鹿児島県の4カ所で半炭化処理した木材チップを用いて開発した木質舗装材を野外で試験施工して、5年間、耐久性などを調べました。

その結果、開発品は強度を保ったまま、腐りにくく、雑草も生えにくいことがわかりました(写真2)。従来の木質舗装材は寿命が10年程度なのに対し、半炭化処理木質舗装材は約20年と耐用年数が2倍近くにもなります。半炭化処理で腐朽菌やシロアリの侵入を防ぎ、アスファルト乳剤(接着剤)が木材チップとなじみやすくなったことで、腐りにくく、はがれにくくなったことが耐久性を高めた主な要因です。

写真2: 従来の木質舗装材(左)半炭化チップを用いた開発品(右)
(奈良県森林技術センター提供)

使った後は燃料として利用

木質舗装材のもう一つの長所は、廃棄するときに燃料として使えることです。小さく砕けば、産業用ボイラーの燃料として使えます。また災害等の緊急時には舗装材をはがして非常用の燃料にすることも可能です。燃やしたあとの灰は舗装材の砂の代わりに使うことができ、完全にリサイクルできることも大きなメリットです。

クッション性があり、歩くときも快適

木質舗装材は、木材を使うことでクッション性に優れ、年少者から高齢者まで歩きやすいことも魅力のひとつです。実際に歩行試験を行ったところ、多くの人が「足への負担が少ない」と回答しました。また、アスファルト舗装材と異なり、夏に熱をためにくく、快適に歩くことができます。そして、見た目にも和の風合いが感じられ、和風庭園にもマッチします(写真3)。

舗装工事の作業性の面でも優れています。一般的な舗装工事ではアスファルトを加熱しますが、木質舗装材を使った舗装工事では加熱の必要がないため、いやな臭いや熱気がなく、さらに木質舗装材の重量はアスファルト舗装材の半分以下であり、作業がしやすい面もあります。

このように、パイロット試験事業では人と環境にやさしいリサイクル可能な舗装材として、その有用性が実証されました。


写真3: 奈良県大和郡山市の公園に試験施工された半炭化
処理舗装材の遊歩道(奈良県森林技術センター提供)

将来は地域の地場産業化で雇用創出も

すでに共同開発者のニチレキ株式会社が関西地方の国定公園や霊園などで半炭化処理木質舗装材を使って施工していますが、さらに普及拡大を進めます。現在のカラーアスファルト舗装の標準的なコストは1m²当たり8,000円程度ですが、今後の技術開発ではこれと同程度までコストを引き下げることが課題です。

半炭化処理木質舗装材の開発に携わってきた吉田貴紘・森林総合研究所木材加工・特性研究領域木材乾燥研究室長は「チップの原料には、地域で発生する製材端材や果樹剪定枝も利用できます。家庭用ストーブや防災用燃料など木材チップの新たな用途を創出できるほか、リサイクル利用もできるため、地域での資源循環型社会にふさわしい材料といえます。」と今後、半炭化処理木質舗装材が全国の公園や遊歩道などに採用され、地場産業の活性化につながることを期待しています。

事業名

農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業(実用技術開発ステージ)

事業期間

平成27年度~平成29年度

課題名

半炭化処理による高性能木質舗装材の製造技術開発

研究実施機関

森林総合研究所、奈良県森林技術センター、東北工業大学、ニチレキ株式会社、有限会社地域資源活用研究所


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