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第224回つくば病理談話会演題

424) 鶏幼雛の心臓

  • 提出者(所属): 漆崎 祥平(動物検疫所中部空港支所)
  • 動物種: 鶏
  • 品種: レッドブロ
  • 性別: 雄
  • 年齢: 15日齢
  • 死・殺の別: 自主淘汰
  • 解剖日: 2019年3月1日
  • 解剖場所: 動物検疫所門司支所新門司検疫場

発生状況および臨床所見

当該雛群は、2019年2月に到着した米国産初生雛で、日本に到着してから係留期間を通して特段の異常は認められず、期間中の累計死亡率1.61%、実施した鳥インフルエンザ及びサルモネラ症の検査は陰性であった。提出症例の個体は、検疫終了時の検査において、脚弱のため自主淘汰され、病理検査を実施した3羽中の1羽である。

病原検査

肝及び脾臓からStaphylococcus aureusが分離された。

部検所見

肝臓の全域で中等度な退色が見られた。その他臓器に著変は認められなかった。

組織所見(提出標本: 心臓)

心筋線維間で骨髄球様の細胞が多数認められ、心膜で広範囲に中等度な偽好酸球・マクロファージ浸潤及び線維素析出が認められた。その他の臓器では、肝臓の全域で中等度な肝細胞の脂肪化、多病巣性に肝細胞の壊死が見られ、散発的に線維素塊が認められた。また、グリソン鞘を中心として骨髄球様の細胞が多数認められ、散発的に軽度な偽好酸球、マクロファージ及びリンパ球浸潤が見られた。脾臓の全域で重度な壊死及びマクロファージ浸潤が見られ、散発的に線維素塊が認められた。
免疫組織化学染色の結果、肝臓及び脾臓でS. aureus抗体に対する微弱な陽性反応が認められた。

討議

ブドウ球菌による敗血症の影響で、髄外造血が強く見られたと考えております。敗血症と雛で一般的に見られる髄外造血との関係について御討議いただくとともに、雛のブドウ球菌症について御経験等ございましたら御教授願います。

診断

  • 組織診断: S. aureusが分離された鶏幼雛の心筋層における髄外造血及び化膿性心膜炎
  • 疾病診断: 幼雛のブドウ球菌症(敗血症型)

425)鶏の気管

  • 提出者(所属): 萩原 寛子(共立製薬株式会社)
  • 動物種: 鶏
  • 品種: ジュリア
  • 性別: 雌
  • 年齢: 317日齢
  • 死・殺の別: 斃死
  • 解剖日: 2019年2月8日

発生状況および臨床所見

約25万羽規模の養鶏場の1鶏舎(110日齢で約23,000羽を2018年7月に導入)において、2019年1月中旬より斃死鶏が増加し、1日当たり約30羽前後が斃死した。産卵率は12月90%~91%を維持していたが、2月上旬には85%まで低下していた。2月1日に斃死鶏3羽、2月8日に鑑定殺鶏2羽と提出症例を含む斃死鶏3羽について病性鑑定を実施した。さらに、別の6羽の気管についても検査を実施した。なお、ニューカッスル病(ND)、鶏伝染性気管炎(IB)、伝染性喉頭気管炎(ILT)、鶏痘(FP)、Mycoplasma gallisepticum (MG)に対するワクチンは接種済みであった。

病原検査

細菌学的検査では、全ての斃死及び鑑定殺鶏(病鑑鶏)の気管スワブからMGが分離された。肝臓、脾臓から細菌は検出されなかった。
遺伝子学的検査では、病鑑鶏7/8羽と気管のみ検体4/6羽の気管からMG遺伝子、病鑑鶏1/8羽の気管からIBウイルス遺伝子が検出された。その他、鳥インフルエンザウイルス、NDウイルス、ILTウイルス、M. synoviae、FPウイルス、トリメタニューモウイルスの遺伝子は、全ての病鑑鶏及び気管のみ検体から検出されなかった。なお、インフルエンザウイルス抗原は簡易診断キットにおいても、全病鑑鶏で陰性であった。
発症鶏舎の生存鶏(321日齢)における血清学的検査では、MG(急速血清凝集反応)陽性率は20%を示し、ILTVのELISA値及びIBVの抗体価とELISA値は、未発症鶏舎との相違は認められなかった。

剖検所見

気管及び鼻腔粘膜は赤色を示し、気管内には粘液と多量の凝血塊が観察された。その他、卵墜及び卵胞出血が認められた。

組織所見(提出標本: 気管)

一部の気管粘膜は深層より剥離し著しい出血が観察され、内腔には剥離した組織と赤血球が認められた。粘膜が残存している部位では、粘膜上皮の過形成及び剥離がみられ、粘膜固有層では重度の血管充盈、リンパ球と形質細胞浸潤が観察された。また、基底膜及び粘膜固有層の小血管周囲において好酸性均質無構造物の重度沈着が認められた。好酸性均質無構造物質は、コンゴーレッド染色で赤橙色、偏光顕微鏡下で緑色の複屈折を示し、過マンガン酸カリ酸化法には感受性であった。
免疫組織化学的検査(IHC)では、ウサギ抗 MG抗体(JA全農家畜衛生研究所)により粘膜上皮の表層に多数の抗原反応が認められ、ウサギ抗鶏AAアミロイド抗体(動衛研)では、基底膜及び小血管周囲の好酸性物質に陽性反応が認められた。なお、ウサギ抗ILTウイルス抗体(動衛研)、マウス抗IBウイルス抗体(Hytest)によるIHC検査において、陽性抗原は観察されなかった。
その他の臓器では、鼻粘膜において気管と同様にアミロイド沈着と単核細胞浸潤が観察されたほか、卵墜性腹膜炎、極軽度な心筋炎及び心外膜炎が観察された。

討議

検査を実施した全ての検体において、同様の気管病変が認められました。気管の出血は、重度のアミロイド沈着が影響していると考えましたが、同様のご経験なども含めご意見お願い致します。

診断

  • 組織診断: 鶏の重度アミロイド沈着と出血を伴うリンパ球形質細胞性気管炎
  • 疾病診断: 鶏のマイコプラズマ症

426) 牛の肝臓

  • 提出者(所属): 池永 直浩(山梨県東部家畜保健衛生所)
  • 動物種: 牛
  • 品種: ホルスタイン種
  • 性別: 雌
  • 年齢: 11カ月齢
  • 死・殺の別: 死亡
  • 解剖日: 2019年5月24日(死後18時間経過)
  • 解剖場所: 山梨県東部家畜保健衛生所

発生状況および臨床所見

公共預託牧場において、5月7日入牧時から体重213kgと発育不良であった育成牛で、削痩が著しくなったため5月16日に放牧を中止し病畜舎に収容したが、血餅を混じた水様性下痢を発症したため、スルファジメトキシン等により治療したが5月23日の夕方死亡。翌日午前中に病性鑑定を実施。入牧前の農場では、平成30年12月下旬(約6カ月齢)に当該牛を含む3頭の子牛で下痢症状を呈したが4~5日で治癒。餌は配合飼料、乾草などを給与していた。預託牧場には中毒性の草は春先にはほぼ見られない。

病原検査

直腸便による寄生虫検査では虫卵やオーシストは認められなかった。ウイルス学的検査ではBVDV、HEV、CoV、RoV、ToV、IBRV、RSV、PI3Vの特異的遺伝子は検出されなかった。細菌学検査では主要臓器を用いて好気培養、嫌気培養を行ったが、有意な菌は分離されなかった。また、直腸便を用いて抗酸菌染色を行ったが、抗酸菌は確認されなかった。

剖検所見

眼球が陥没し、肛門周囲に黒色便が付着していた。腹腔内には黄色透明の腹水が貯留し、胆嚢には粘性の高い胆汁が貯留していた。

組織所見(提出標本: 肝臓)

肝臓はび慢性に比較的均一または不整形・不完全な管腔構造を呈する胆管の著しい増生がみられ、増生した胆管や門脈トライアッドおよびその周囲の肝細胞がび慢性に壊死し、単球や線維芽細胞、マクロファージ、好中球が浸潤していた。肝細胞の壊死巣も散見された。一部の壊死巣内で出血が見られた。中心静脈および小葉間静脈はび慢性に拡張。小葉間胆管や増生した胆管内で黄緑色の貯留物がび慢性に見られた。ホール法により胆汁であることを確認した。アザン染色では壊死巣内および増生した胆管や門脈トライアッド周囲で膠原線維の増生が見られた。PAS染色では壊死巣内で大小不同の顆粒状に赤紫色に染まるものがごく少数限局してみられた。ロダニン染色、グラム染色、チール・ネールゼン染色では染まってくるものは見られなかった。
腎臓では皮質の全域にわたって近位曲尿細管が変性し核が消失。遠位曲尿細管も一部変性し上皮が剥離。間質には軽度に単球が浸潤。髄質、腎乳頭の尿細管上皮もび慢性に変性、脱落。

討議

腎臓の組織所見は死後変化によるものと考えられ、また実施した病原検索や組織所見、疫学調査からは原因の究明には至りませんでした。考えられる疾病及びその確定診断に必要な検査についてご教授ください。

診断

  • 組織診断: 牛の肝臓の胆汁うっ滞、胆管の増生を伴った胆管炎および肝細胞の巣状壊死
  • 疾病診断: