畜産研究部門

草地管理ユニット

周年放牧に向けた冬作ライムギ草地でのストリップ放牧

1.周年親子放牧の導入による耕作放棄地等の有効活用に向けて
繁殖農家の減少に伴う子牛供給不足から、肥育素牛価格は急激に上昇しており、将来における肉用子牛の安定供給が大きな課題となっています。一方、中山間地域では耕作放棄地が急増しており、その解消が農政の重要な政策課題となっています。この二つの大きな課題を一挙に解決する手段として、耕作放棄地に省力かつ収益性の高い肉用牛の周年親子放牧を導入する方法が考えられています。草地管理ユニットでは、周年親子放牧の導入に関連して、耕作放棄地等を基盤とする飼料の通年供給体系を確立するために、効率的な草地の利用法や牧草の作付け技術を開発しています。これらに合わせ、家畜の飲水システムや土壌の保全技術、経営安定化手法など、放牧の導入に不可欠な周辺技術についても開発を行っており、課題解決に向けたシステム作りを進めています。

2.草地管理の省力・省資源化に向けて
放牧を活用した畜産の醍醐味は、人間が直接利用できない太陽エネルギーを牧草~家畜に置き換えることで、省力・省資源的に食料(栄養素)を得るところにあります。その入り口となる牧草地面積は全国で61.1万haあり、その内の13.9%(8.5万ha)は公共牧場の草地が占めています。とくに都府県では公共牧場の草地面積が牧草地面積の33.6%(3.4万ha)を占めており、各地域の重要な飼料基盤となっています。これら公共牧場を含む牧草地は、それ自身の持つ広大な景観が多くの人々を魅了しますが、一方では、肥料価格などの高騰による生産コストの上昇に加え、経験や勘に頼った作業体系による非効率性など、「広大さ」ゆえの経営的問題も内包しています。また、利用の経年化による植生の悪化や、管理者の高齢化による技術の継承問題など、将来に向けた基盤の強化も喫緊の課題です。草地管理ユニットでは、放牧管理ユニットと共同し、管理作業に必要な情報の「見える化」、「共有化」、「データベース化」を通じて「人材と資材の適性配分」を可能にするシステム作りを進めています。これにより、経験や勘に頼った作業からの脱却だけでなく、草地管理の省力・省資源化も可能となり、将来に向けた経営基盤の強化が期待できます。


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