畜産研究部門

放牧家畜ユニット

ほ乳前後の体重差法によるほ乳量の測定

私達は、放牧家畜の飼養、生理・栄養、衛生に関する研究を専門とするユニットです。放牧には自給飼料の収穫、給餌、糞尿処理などの作業が削減でき、省力的、低コストという利点がありますが、反面、家畜が暑熱や寒冷などの気象ストレスを直接受けたり、病気や発情を見逃したり、家畜の食べている量がわからないため栄養不足になったりという欠点もあります。放牧の利点を生かすためには、家畜のステージや生産目標に合わせた管理が必要です。そのためには、放牧家畜に特有の課題や生理反応などを明らかにし、適切な管理技術の開発が求められています。

現在、取り組んでいる主な課題は、周年親子放牧における健全な子牛の育成技術の開発です。離乳まで母牛と一緒に放牧する親子放牧では、舎飼いに比べて子牛の成育が悪いことが課題にあげられます。また、吸血昆虫が媒介する病気が放牧で問題となっています。近年、特に問題になっているのが牛白血病ウィルス(BLV)により引き起こされる地方病性牛白血病です。多くの牛はBLVに感染しても発症しませんが、発症すると経済的な損失は大きく、周年親子放牧の普及で大きな課題となっています。また、BLV感染した母牛の哺育能力への悪影響も懸念されています。そこで、BLVに感染した母牛の哺育能力や産子の発育状況等の生産性に及ぼす影響を栄養学的、生理学的、免疫学的なアプローチから解明するとともに、BLV伝播リスク要因を低減した子牛の健全育成技術の開発に取り組んでいます。自律神経機能の乱れから牛のストレス状態の初期兆候を検知するウェアラブルストレスセンサの開発にも携わっており、これによりストレスによって発症する病気や生産性の低下等の異常を事前に検知することで、飼養管理を適正に改善することを目指しています。

東京電力福島第一原子力発電所の事故では、北関東、東北の草地が放射性物質で汚染され、多くの草地で放牧利用が自粛されました。これらの草地に再び家畜を放牧できるように放射能対策についても取り組んでいます。


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