遺伝子の定量による形質転換植物の導入遺伝子数および遺伝子型の識別


[要約]

競合的定量PCR(QC-PCR)法に基づく迅速で簡便な形質転換植物の導入遺伝子数および遺伝子型の識別技術の適用により、初期選抜においてコピー数及び次選抜で遺伝子型の判別がわずかなサンプルから可能となり、後代の採種と同時に導入遺伝子の遺伝的固定を終了させることができる。

[キーワード] QC-PCR、遺伝子、コピー数、遺伝子型、形質転換、シロイヌナズナ、イネ
[担当] 岐阜生物研・先端育種分野
[連絡先] 0574-25-3803
[区分] 関東東海北陸農業・関東東海・生物工学
[分類] 技術・参考

[背景・ねらい]

遺伝子組換え技術を利用した植物育種においては、目的とする遺伝子が一つ導入された(シングルコピー)ホモ接合体を獲得することは、形質転換体の作出以降の研究及びその応用以外に、育種母本としての利用においても重要である。しかしながら、従来の手法ではサザンブロッティング法によるコピー数の確認や後代検定による遺伝子型の判別など、作業が繁雑でかつ長期間の選抜が必要である。そこで、これら一連の作業を効率化するためQC-PCR法に基づく迅速で簡便な形質転換植物体の個体識別(コピー数、遺伝子型)技術を開発し、カナマイシン耐性遺伝子あるいはハイグロマイシン耐性遺伝子を有する形質転換体に適用することで、その有効性について検討する。

[成果の内容・特徴]

  1. 抗生物質による初期選抜後のシロイヌナズナ形質転換体において、カナマイシン耐性遺伝子(NPTII)をターゲットとして、アグロバクテリウム法により導入された遺伝子のコピー数をQC-PCR法により確認したところ、少なくともダブルコピーまでのコピー数は、サザンブロッティング法により求めた値と完全に一致する(表1)。
  2. コピー数を解析したシロイヌナズナ形質転換体の次代において、QC-PCR法によりNPTIIをターゲットとして遺伝子型を確認したところ、後代検定により求めた遺伝子型と一致する(表2)。また、コピー数が判別されていれば、その多少に関係なく遺伝子型を解析することができる。
  3. イネ形質転換体においてハイグロマイシン耐性遺伝子(HPTII)をターゲットとして、導入された遺伝子数(ホモ)をQC-PCR法により確認したところ、少なくともダブルコピーまではサザンブロッティング法により求めた値と一致し、このことは作物種あるいは目的とする遺伝子が異なっても適用可能な有効な技術であることを示している(表3)。
  4. 検出限界コピー数は4であるが、改良によりそれ以上の検出も可能である(未公開データ)。
  5. QC-PCR法による形質転換体の識別技術は、目的とする遺伝子のコンペティター(図1)が構築できれば、一般的な遺伝子増幅装置と画像解析装置などにより簡単に適用が可能である。
  6. 形質転換後の植物体の初期選抜として導入遺伝子数を解析し、目的とするコピー数の遺伝子を有する個体のみ交配させ、さらに次代の解析によりその遺伝子のホモ接合体のみ交配させることで、その後代の採種により遺伝的固定が終了できることから、特に育種母本の作出を目的とした遺伝的固定における労力や時間の大幅な効率化を図ることが可能である。

[成果の活用面・留意点]

  1. 後代作出が困難な植物種への適用により、さらにその効果が期待できる。
  2. 目的とする遺伝子に対するコンペティターを、あらかじめ調製しておく必要がある。

[具体的データ]

図1 競合的定量PCR(QC-PCR)で用いたNPTIIのコンペティターベクター

[その他]

研究課題名 :有用遺伝子導入法による萎凋病抵抗性ホウレンソウの作出技術の開発
予算区分 :先端技術等地域実用化促進事業
研究期間 :2000~2001年度
研究担当者 :本田宗央、町田雅之(産総研)、小山博之(岐阜大)
発表論文等 :1)本田宗央、小山博之(2001)「植物個体識別方法及び育種方法」特願2001-292400
 2)Honda M., Muramoto Y., Kuzuguchi T., Sawano S., Machida M. and Koyama H.
Determination of gene copy number and genotype of transgenic Arabidopsis thaliana by competitive PCR. Journal of Experimental Botany (in press).

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