果実肥大性関連遺伝子を導入した形質転換トマトの作出


[要約]

メロンから単離した果実肥大性に関連するHMG-CoAレダクターゼ遺伝子を導入した形質転換トマトは、非形質転換トマトに比べて、果肉が厚く、生重量が重くなる。

[キーワード] 果実、肥大性、遺伝子、形質転換、トマト、メロン、果実肥大、果肉、生重量、HMG-CoAレダクターゼ
[担当] 茨城県農業総合センター生物工学研究所・野菜育種研究室
[連絡先] 0299-45-8330
[区分] 関東東海北陸農業・生物工学
[分類] 科学・参考

[背景・ねらい]

果菜類においては、果実の食味とともにその大きさが商品価値を決定する重要な要素となる。これまでに、メロン果実の肥大性は果肉細胞数で決まることを明らかにした。この果肉細胞数の分裂は様々な因子により制御されるが、その候補因子の1つに果実肥大性に関与する遺伝子としてHMG-CoAレダクターゼ遺伝子(HMGR)が生産する酵素がある。すでに、メロンからこの遺伝子(Cm-HMGR)を単離しており、この遺伝子を果菜類に導入した形質転換体を作出し、果実肥大性への影響を直接的に証明する。

[成果の内容・特徴]

  1. Cm-HMGRタンパク質の触媒ドメインをコードする遺伝子(Cm-HMGR-CD)にCaMV-35sプロモーターをつなぎアグロバクテリウム法でトマト(品種:マネーメーカー)に導入することによりCm-HMGR-CD導入形質転換トマトを作出できる。
  2. 形質転換トマトのうち導入遺伝子が働いて果実肥大性に関与するHMGRタンパク質を発現する個体が得られる(図1)。
  3. 形質転換トマトCD25系統のT世代において、HMGRタンパク質の発現量がやや多い(+)個体は、植物の成長がやや抑えられる程度である。しかし、発現量が多い(++)あるいは甚だ多い(+++)個体は、植物の成長が抑えられ、枯死する個体も見られる(表1)。
  4. CD25系統のT世代において、HMGRタンパク質の発現量が多い(++)あるいは甚だ多い(+++)個体は果実肥大性が非形質転換体に比べて著しく劣る。しかし、HMGRタンパク質の発現量がやや多い(+)個体の果実は非形質転換体に比べて大きくなる(表2)。
  5. 特に、縦方向の成長が促進され、その果実肥大の促進には果肉部分の肥大が関与しているが(表2)、果実肥大・追熟に要する日数に顕著な差は認められない。
  6. 以上のことより、Cm-HMGRをトマトに導入しHMGRタンパク質の発現量がやや多い(+)形質転換体においては果実肥大性を付与することが可能である。

[成果の活用面・留意点]

  1. HMGRタンパク質の発現量がきわめて多い個体の植物体の成長遅延ならびに枯死は、導入遺伝子を常時動かした結果であると考えられ、導入遺伝子を果実肥大時期特異的に動かすプロモーターを検討することにより、トマトの果実肥大性を制御する基本技術として利用できる。
  2. トマトCD25系統の後代における導入遺伝子の遺伝的安定性の確認並びに、文部科学省、農林水産省の指針に沿った環境に対する安全性評価等は未検定である。

[具体的データ]

図1.T世代における
Cm-HMGR-CDタンパク質の発
現(ウエスタンブロット法、
系統:CD22 CD25 CD26)

図2.T世代における
Cm-HMGR-CD25タンパク質の
発現(ウエスタンブロット
法、系統:1~5、反復:A、
B)

[その他]

研究課題名 :メロンの果実肥大性に関連する遺伝子の検索
予算区分 :県単
研究期間 :1999~2000年度
研究担当者 :小林俊弘、江面浩、加藤澄恵、冨田健夫
発表論文等 :Toshihiro Kobayashi, Sumie Kato, Hiroshi Ezura (2000) “Involvement of HMG-CoA reductase in melon fruit development.” 6th International Congress of Plant Molecular Biology, Quebec, Canada, June 18-24, 2000.

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