堆肥由来全窒素投入量からみたナシ園への牛ふん堆肥施用基準
[要約]
ナシ園へ堆肥を多量に連用すると土壌中の窒素量が高まり過ぎるため、硝酸態窒素の溶脱量が多くなる恐れがある。連用を前提とした牛ふん堆肥施用量は、施肥基準どおりの肥料投入園の場合、全窒素で年間10kg/10a程度を上限とする。
| [キーワード] |
牛ふん堆肥、ナシ、全窒素、硝酸態窒素 |
| [担当] |
長野県南信農業試験場・環境部 |
| [連絡先] |
0265-35-2240 |
| [区分] |
関東東海北陸農業・関東東海・土壌肥料 |
| [分類] |
技術・普及 |
[背景・ねらい]
本県におけるナシ園への土づくり資材としての有機物施用は、その種類や成分が多種多様であることから、含有成分は施肥量にカウントせず現地対応的な指導が行われている。また、近年の減化学肥料・有機質指向に偏るあまり、一部のナシ園では堆肥施用量が多い事例がみられる。そこで連用を前提とした牛ふん堆肥施用について、窒素に着目して圃場収支や土壌中での動態を明らかにし、環境に負荷を与えない施用基準を作成する。
[成果の内容・特徴]
- 現地ナシ園2圃場において、それぞれ牛ふんオガクズ堆肥で10aあたり1t、3t、5tを4年間連用し、窒素の動態を調査した。堆肥の施用量が多くなるに従い、圃場へ投入される窒素量は多くなるが、圃場外へ搬出する果実や剪定枝は微増するに過ぎない。したがって、投入量から搬出量を差し引いた窒素収支は、堆肥施用量に応じて増加した。堆肥連用4年後の表層土壌には一部窒素が蓄積しているが、堆肥施用量が多いほど主として地下浸透や脱窒と考えられる不明な窒素量も増えた(表1)。なお、堆肥施用量の違いによるナシの収量性や果実品質に影響は認められなかった。
- 連用にともない堆肥由来の窒素の多くは土壌表層で蓄積されるが4年目にはその増加は頭打ち傾向となった(図1)。3年経過した後の土壌を採取し、土壌からの無機化窒素量を推定したところ、2圃場とも堆肥施用量に応じて無機化窒素量は増加したことから、吸収や脱窒・溶脱などで移動量が多くなると考えられた。(図2)
- 連用圃場で土壌深さ1mにおける土壌溶液中の硝酸態窒素濃度は、堆肥施用量が多いほど硝酸態窒素濃度も高く推移した。(図3)
- 堆肥由来全窒素20kg/10a程度以上の連用は、不明窒素量を増大させてナシ樹の主要根群域より下層の土壌中硝酸態窒素濃度を高める。したがって、ナシ園への連用を前提とした牛ふん堆肥年間施用量は、県施肥基準(16~20kgN/10a)どおりの肥料投入園の場合、10a当たり全窒素で10kg程度を上限とするのが適当と考えられた。これは、牛ふん堆肥現物で全窒素含有率(T-N%)が1%の時は1t、0.5%の時は2t程度の施用となる。
[成果の活用面・留意点]
- 本成果は窒素のみに着目しており、堆肥施用に由来するその他の成分(例えば塩基バランス等)及び土壌の物理性・生物性への影響は、従来の技術・知見を利用して別途検討が必要である。
- 今後、堆肥由来肥料成分を考慮して、減肥の可能性について検討する必要がある。
[具体的データ]




[その他]
| 研究課題名 |
:有機質資材などの施用技術の確立 |
| 予算区分 |
:委託(農業環境収支適正化確立事業) |
| 研究期間 |
:1997~2001年度 |
| 研究担当者 |
:宮下純、塩原孝、萩原保身 |
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