近赤外分光分析を利用した家畜糞堆肥の窒素無機化量の迅速測定法
[要約]
近赤外分光分析法による家畜糞堆肥の窒素無機化量の推定が可能である。従来の保温静置法と比較して測定期間の大幅な短縮と実験操作の簡便化が図られ、その測定精度は実用的な範囲にある。
| [キーワード] |
近赤外分光分析、家畜糞堆肥、窒素無機化量、迅速測定法、2次微分 |
| [担当] |
長野農事試・土壌肥料部 |
| [連絡先] |
026-246-2411 |
| [区分] |
関東東海北陸農業・関東東海・土壌肥料、関東東海北陸農業・関東東海・総合研究 |
| [分類] |
技術・参考 |
[背景・ねらい]
家畜糞堆肥の成分は、処理方法、原料や副資材の種類、腐熟度の違い等により大きく異なることが知られており、その成分量を把握し、肥効を考慮した施肥設計立てることは、養分循環の適正化の視点から重要な技術である。
特に作物の生育・収量に大きな影響を及ぼす窒素に関しては、全量だけではなく、無機化量を把握することが重要であるが、保温静置法による測定は1ケ月以上かかるため、より簡易・迅速に測定が可能な近赤外分光分析法について検討した。
[成果の内容・特徴]
- 試料は、摂氏50度で3日間乾燥した後、カッティングミルで粗粉砕(スクリーン2mm)し、更にサイクロンミルで微粉砕(スクリーン0.5mm)した。保温静置法(摂氏30度、4週間、湛水培養)による分析は従来の方法で実施した。近赤外分光分析計はInfra Alyzer 500を使用し、1100~2500nmの範囲を2nm間隔で拡散反射率を測定した。
長野県内の畜産農家から収集した堆肥122点の畜種別構成を図1に、保温静置法による窒素無機化量の基本統計量を表1に示した。分析値を参考にして成分含量が偏らないように、検量線作成用試料62点と検量線評価用試料60点に分割した。
- 検量線は、吸光度又は2次微分値(Segment10、Gap0)を説明変数、標準分析値を目的変数とする重回帰分析(Step Up Search)により作成した。説明変数の増加による過剰適合を防止するため、得られた複数の検量線を、検量線評価用試料群のスペクトルデータに適用し、予測標準誤差(SEP)が最も小さいものを最適な検量線とした。
- 最適な検量線のデータを表2に示した。吸光度を用いた場合、2130~2430nmの範囲で波長が選択されたが、2次微分値では一定の傾向は認められなかった。吸光度は2130及び2140nm、2次微分値は2156nmのt値(相対的な寄与度の指標)が大きかった。
吸光度及び2次微分値と窒素無機化量の相関スペクトルを図2に示した。吸光度の場合は、2000nmより長波長域の広い範囲で、2次微分値の場合は、特定の狭い範囲の波長域で、窒素無機化量と高い相関関係が認められた。吸光度、2次微分値共にアミドのN-Hによる吸収があると考えられている2150nm付近で最も高い相関係数を示した。
- 2次微分値を用いた検量線の評価における散布図を図3に示した。試料の測定レンジ、予測標準誤差から判断して、この検量線は農家が測定結果を施肥設計に利用するといった実用レベルで使用可能である。
[成果の活用面・留意点]
- 適用できる試料の範囲は副資材として、おが屑、きのこ培養残渣、木屑、樹皮、稲わら、籾がらのいずれかを含むもので、腐熟度は未熟なものから完熟なものまで測定可能である。
- 乾燥・粉砕した試料1検体あたり5~6分で測定でき、保温静置法と比較してきわめて簡易・迅速である。
- 全炭素・全窒素・粗灰分等との同時多成分測定が可能である。
[具体的データ]





[その他]
| 研究課題名 |
:飼料イネの中山間地帯における省力的生産・調製・利用技術の確立 |
| 予算区分 |
:地域基幹 |
| 研究期間 |
:1999~2001年度 |
| 研究担当者 |
:佐藤強、上原敬義、渡辺晴彦 |
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