採胚不良牛への甲状腺ホルモン利用による過剰排卵処置成績の向上


[要約]
黒毛和種供胚専用牛のうち、供用年数が長い成績不良牛群(過去通算の1頭1回当たり回収胚9個未満、正常胚数5個未満)に対して、動物用甲状腺ホルモン製剤(TD)を過剰排卵処置(SOV)前の発情時から、3日間隔で3回(1回10ml、有機総ヨウ素500μg相当)皮下投与する事で、採胚総数、正常胚数・率の向上が望める。

[キーワード]採胚不良牛、甲状腺ホルモン、過剰排卵処置、胚生産、ウシ

[担当]三重科技セ・畜産研究部・家畜改良繁殖担当
[連絡先]電話0598-42-2194
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]科学・参考

[背景・ねらい]
 採胚成績は、個体差が大きく、また、供用年数の増加とともに成績不良に陥るものも認められ、淘汰更新が進まない場合、牛群全体の過半数を成績不良牛で占める状況にもなりうる。そこで、基礎代謝(蛋白・糖・骨代謝、成長や組織の分化等)の維持や、繁殖面にも関係深い甲状腺ホルモン(トリヨードサイロニン:T3及びテトラヨードサイロニン:T4)の黒毛和種供胚専用牛における血液中値を調査し、採胚成績等との関係を分析するとともに、動物用甲状腺ホルモン製剤(TD)投与試験(採胚不良牛群中9頭、延べ13頭を用い、同一個体を投与区と対照区に反転実施。)でのT3、T4値の推移や、採胚結果を検討して、TDの応用による成績不良牛の胚生産性向上を実証する。

[成果の内容・特徴]
1. 採胚成績別の甲状腺ホルモン値は、成績不良群ほどT3、T4値ともに低く、血液中に分泌される甲状腺ホルモンの90%以上を占めるT4値は、全体に牛の正常範囲(3.6~8.9μg/dl)をやや下回っている。また、T4よりも細胞レベルでの生物学的作用が5~7倍高いT3は、全体に正常範囲内だが、採胚不良牛は良牛と比較して低い値となる。年齢別のT3、T4値分布状況は、年齢が進むに従い両値とも低下傾向である(図1)。
2. TDをSOV実施前の発情時から3日間隔で3回(1回10ml)皮下投与すると、投与前後におけるホルモン値の推移は、T3、T4値とも投与2時間以降で上昇し、採胚時には低下している(図2 , 3)。
3. 採胚不良牛に対するTD投与終了後、SOV開始直前の卵巣所見は、総卵胞数が増加し、SOV終了後、人工授精時の大中卵胞数及び総卵胞数も増加する等、卵胞発育刺激効果が認められ、採胚時には卵巣が増大する。その結果、採胚成績は、TD投与によって、正常胚数と正常胚率が増加し、胚のランクもA’以上の優良胚数と優良胚率の向上効果が期待できる(表1)。

[成果の活用面・留意点]
1. 今後、投与回数等の減量化も含め、他の品種や若齢牛への応用も、検討する価値があると考えるが、豚甲状腺から抽出された本製剤は、近年、原料の入手が困難な為、H16年12月に製造中止となり、現在、動物用医薬品としての当該ホルモン製品は存在しない。
 なお、細胞培養や生化学関係等で用いられている化学合成されたT3、T4試薬は入手でき、これを注射薬に調合した利用は、可能と思われる。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:過剰排卵処置時の甲状腺ホルモン利用方法の検討
予算区分:県単
研究期間:2002~2004年度
研究担当者:水谷将也、島田浩明、余谷行義

目次へ戻る