ホルモン無添加培地を用いるとブタ未成熟卵母細胞を発生能を損なうことなく保存できる


[要約]
ブタ未成熟卵母細胞を24時間、ハンクス塩TCM-199培地中で培養した結果、卵母細胞の核成熟が抑制された。さらに、保存後の卵母細胞において成熟能および発生能が確認され、核移植技術への応用が示唆された。

[キーワード]ブタ、卵子、体外成熟、保存

[担当]静岡中小試・豚体細胞クローンプロジェクトスタッフ
[連絡先]電話0537-35-2291
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(中小家畜)
[分類]科学・参考

[背景・ねらい]
 現行の核移植技術では、卵子の成熟時間に合わせて一度に多数の卵子を操作しなければならない。また、高度な技術を要するので、核移植を成功に導くには技術者にかなりの集中力が要求される。その一方で、技術者は、早朝や深夜に卵子を操作しなければならない場合が多く、必ずしもその技術を充分に発揮できていないのが現状である。しかし、ブタ未成熟卵母細胞を、その発生能を損なうことなく一時的に保存可能であれば、卵子を操作する時間を調整することができる。通常のブタ卵母細胞の成熟培養は、ホルモン剤(hcg とoestradiol-17β)添加培地で行う方法が一般的に行われているが、高浸透圧かつホルモン剤無添加の培地環境下で、卵核胞崩壊が有意に抑制されるという報告があり、比較的浸透圧が高い一般的な成熟基礎培地で培養するだけで成熟が抑制されることが予測できる。
 そこで、ホルモン剤無添加培地で保存したブタ卵母細胞の卵核胞期率、第2減数分裂中期への成熟率および活性化刺激後の単為発生能について調べる。

[成果の内容・特徴]
1) 未成熟卵母細胞を、20mMHepesおよび10%ウシ胎子血清添加Hanks塩TCM-199中に回収し、37℃、空気中で24時間保存すると、88.9%(265/298)が卵核胞期を維持できる。次いで、保存した卵母細胞について、NCSU37培養液を用いて成熟培養を行うと、成熟率に保存区と対照区(保存せずに成熟培養)で有意な差は認められない。(表1
2) 18~24時間保存した卵母細胞における、成熟培養20~46時間後の第2減数分裂中期への成熟率は、成熟培養40時間目でほぼ平衡に達する。(図1
3) 成熟培養後44~58時間の間で2時間おきに活性化(150kV/cm DC、99μsec)後の胚盤胞期胚への発生率は、成熟培養44~48時間と比較して52時間以降で有意に増加する。胚盤胞期胚1個当りの細胞数は、培養時間による差は認められない。(図2

[成果の活用面・留意点]
1) 保存卵母細胞をレシピエントとした核移植技術に応用できる可能性がある。
2) 核移植に適切な条件(活性化時間など)についてさらに検討する必要がある。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:豚クローン技術の確立と利用に関する研究
予算区分:県単
研究期間:2002~2004年度
研究担当者:土屋聖子、大竹正剛、柴田昌利、河原崎達雄

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