牧草の秋季備蓄期間中におけるカラマツ林地の放牧利用


[要約]
黒毛和種繁殖雌牛で秋季備蓄技術による放牧期間延長を行う際、牧草の備蓄期間中の代替放牧地として立木密度を300本/ha程度に強度間伐したカラマツ壮齢人工林地での林間放牧が利用できる。

[キーワード]放牧、カラマツ林地、秋季備蓄、黒毛和種、肉用牛

[担当]山梨酪試・草地環境科
[連絡先]電話0551-32-3216
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(草地)
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 放牧主体の肉用繁殖経営においては、放牧期間の延長が省力化やコスト削減に有効である。その一方法として、秋季に放牧地の牧草を立毛備蓄(ASP:Autumn Saved Pasture)して冬期に放牧利用する技術があるが、備蓄期間中は放牧ができないため、代替の放牧地が無いと放牧可能頭数が減少する。一方、飼料増産や国土の有効活用の観点から林地の畜産的利用に対する期待が再び高まりつつある。そこで、強間伐したカラマツ林地を秋季備蓄期間中の代替放牧地として利用し、放牧のメリット増大と林地の有効活用に寄与する。

[成果の内容・特徴]
1. 2産次以降の黒毛和種繁殖雌牛を、8月下旬から10月下旬の約60日間、立木密度が311本/haのカラマツ壮齢人工林地(面積8.5ha、標高約1,300m、放牧頭数5頭)に、鉱塩を除く補助飼料を給与せずに放牧しても概ね体重を維持することが可能で、林間放牧中に備蓄を行った草地に転牧することにより、放牧期間の延長が図れる(図1)。林地の収容頭数は35頭・日/haで、1頭当たりの必要面積は1.5~2.0ha程度となる。なお、放牧による立木への被害はほとんど無い。
2. 相観植生調査による林床植生は、草本類ではミヤコザサやススキ、木本類ではサワフタギやミヤマニガイチゴが多いが、放牧によりススキやミヤコザサは衰退し、木本類が増加する。しかし、放牧牛は林地入牧直後にはススキやミヤコザサ以外の草本類、つる性植物を中心に採食するが、それらの量が減少するとミヤコザサに加え、木本類の葉も多く採食する。(表1
3. 放牧を継続すると、ススキやミヤコザサはさらに衰退すると予測されるが、ススキが急速に衰退するのに対し、ミヤコザサは衰退が比較的遅い(図2)。
4. 林間放牧地における放牧牛の休息場所は、水飲場周辺や柵沿いの平坦な場所に多い(図3)。特に水飲場周辺で休息することが最も多いので、水飲場を管理しやすい場所に配置することで巡視や集畜等の作業を比較的容易にできる。

[成果の活用面・留意点]
1. 中部高標高地域のカラマツ壮齢人工林地で活用できる。
2. 長期間放牧利用するためには、放牧年数の経過とともに休牧の実施や牧草の導入等を行う必要がある。また、育成牛や初産牛、分娩前3ヶ月間の妊娠牛は、林地の野草だけでは栄養的に不足するので、補助飼料の給与が必要である。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:牛の林地内放牧技術の検討
予算区分:国補
研究期間:1999~2003年度
研究担当者:保倉勝己、田瀬和浩、山根京平(信大農)、竹田謙一(信大農)、松井寛二(信大農)、長池卓男(山梨森林総研)、木村淳夫(山梨県立八ヶ岳牧場)
発表論文等:1)保倉ら(2003)日草誌 49(別):182-183.
      2)山根ら(2003)日草誌 49(別):184-185.

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