簡易ばっ気式家畜ふん尿処理システム


[要約]
比較的低価格で施設が設置でき、容易に維持管理できる畜舎汚水の浄化処理システムで、低濃度(BOD容積負荷0.1~0.2kg/ m3)汚水の処理に適している。ただし、低温期には、ビニールで施設を囲う等により処理水の温度や曝気量を確保する必要がある。

[キーワード]家畜ふん尿、畜舎汚水、簡易曝気、浄化処理、硝化反応、脱窒

[担当]静岡畜試・環境飼料部
[連絡先]電話0544-52-0146
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(畜産環境)
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 平成10年度に本県の酪農家に導入された家畜尿の簡易曝気式浄化処理法は、その後、県内各地に設置され比較的安価な処理システムとして普及している。本システムは、中古の飼料タンク等を利用し、簡易な曝気で汚水を処理するもので、平成16年までに本県では60戸に導入されている。この処理方法は微生物による浄化処理であり効果の発現にバラツキがある。そこで、当場に実証施設を設置し、効果的な利用方法を検討する。

[成果の内容・特徴]
1. 当場に設置した実証施設は、5tタンク6基を直列に配置し160L/分の曝気量で日量500Lの汚水を連続処理している。冬期は温度確保のため密閉式ビニールハウスに改造した。処理フローは以下のとおりである。
    牛舎→ふん尿分離汚水→貯留槽→曝気槽→沈殿槽→脱窒槽→処理液散布
 施設設置費(搾乳牛尿換算37頭規模、施設耐用年数7年)は2,121千円、ビニールハウス改造費200千円、維持管理費は年間約85千円である。
2. BOD、CODの浄化能力は、季節変動が大きく高濃度のスラリーでは十分な浄化ができない(表1)。BOD容積負荷は気温が確保できる条件という前提で0.1~0.2kg/ m3程度(平成16年5月のBOD容積負荷が0.106 kg/ m3)と考えられる。
3. 窒素成分は硝化細菌により硝酸態窒素に変化している(図1)。しかし、硝化細菌の活動の至適温度を下回る冬期には硝化反応が起こらない。硝化反応が終了した処理液について、脱窒のために水素供与体として添加した場合の効果は、牛乳、エタノール、生ふんの順であったが(図2)、牛乳や生ふんは添加後に腐敗臭が発生するため、最も取扱いやすいのはエタノールである。脱窒は実証施設でも硝化の終了した槽で曝気を止め、嫌気状態でエタノールを5L(0.1%)添加することにより5~10日程度で脱窒が可能である。
4. 処理液の臭気低減効果については、アンモニア水や乳牛生糞尿で試験したが消臭効果は認められなかった(データ省略)。しかし、処理液を当場の300m3スラリータンクに毎日500Lを還元したところ、曝気により緑黄色から褐色に変化、泡が発生しスラリー臭が低減した(表2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 微生物活性を保つために温度管理と曝気量が重要であり、導入地域は豪雪地帯及び厳しい寒冷地を除く地域で、小規模の搾乳牛及び養豚で固液分離した尿汚水が対象となる。
2. 施設稼動状況の確認指標として、従来のpH,ECに加え硝化反応を試験紙で確認する。
3. 処理液の放流は難しく、曝気により臭気を低減した後に農地還元が前提となる。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:簡易曝気によるスラリーや家畜尿の処理技術の確立
予算区分:委託 (畜産環境整備機構の簡易低コスト家畜排せつ物処理施設開発普及促進事業)
研究期間:2002~2004年度
研究担当者:遠藤 悟、芹澤駿治、藤井信吾、大庭芳和
発表論文等:1)遠藤ら(2003)静畜研報30:39-45.

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