地球温暖化による三重県のニホンナシとカキの生育変動


[要約]
三重県のニホンナシ「幸水」は、自発休眠覚醒期が遅延し、開花期と収穫期が前進している。カキ「前川次郎」は、収穫期が遅延し、満開期から収穫最盛期の期間が拡大している。これらの現象は、地球温暖化の影響によるものと推察される。

[キーワード]ニホンナシ、カキ、温暖化、気温、自発休眠覚醒期、開花期、収穫期

[担当]三重科技セ・農業研究部・園芸グループ
[連絡先]電話0598-42-6358
[区分]関東東海北陸農業・果樹
[分類]科学・参考

[背景・ねらい]
 地球温暖化が果樹農業に及ぼす影響に関して、(独)農研機構果樹研究所がとりまとめた全国規模の実態調査結果(2004年)によると、全ての都道府県において温暖化に起因すると推定される現象が出始めている。今後、温暖化がさらに進むと予想されることから、この対応のためには現時点での影響を把握しておく必要がある。そこで、同一圃場で栽培された1981~2003年のニホンナシ「幸水」および1987~2003年のカキ「前川次郎」の調査データを用いて、生育相と気温との関係およびこれらの年次変動について解析した。

[成果の内容・特徴]
1. 「幸水」の満開期の変動に影響している2/上~4/上の気温において、年次と正の相関を示す時期があり(表1)、この影響により満開期は前進している(図1A)。
2. 「幸水」の収穫最盛期の変動に影響している2/上~5/中の気温において、年次と正の相関を示す時期があり(表1)、この影響により収穫最盛期は前進している(図1B)。
3. 「幸水」の自発休眠覚醒期予測値は年次と正の相関を示し、遅延している(図1C)。
4. 「前川次郎」の満開期から収穫最盛期までの期間(果実生育期間)に関連している満開後101~120日の気温は、年次と正の相関を示し(表2)、気温の高い時期へ移動している。この影響により果実生育期間は拡大している(図1A)。
5. 「前川次郎」の収穫最盛期の変動に影響している気象要因は特定されなかったが、収穫最盛期は遅延している(図2B)。これには果実生育期間の拡大が関係している(表2)。
6. 「前川次郎」の発芽期の変動に影響している2/上~3/上の気温と年次との相関は認められず、また、満開期の変動に影響している2/上~5/上の気温は、年次と正の相関を示す時期がある(表2)。
7. 「前川次郎」の発芽期、満開期および自発休眠覚醒期予測値の年次変化に傾向はない(データ省略)。

[成果の活用面・留意点]
1. 地球温暖化などの気候変動の影響評価指標の一つとして利用できる。
2. ニホンナシでは、品種や栽培地域によって生育の変動が異なることが報告されているため、個々の条件に応じて解析する必要がある。
3. 自発休眠覚醒期の予測は、ニホンナシ「幸水」では杉浦(1997年)の、カキ「前川次郎」では中村ら(1998)の予測モデルを用いた。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:新品種の選定および地域特産物の高品質技術開発
予算区分:県単
研究期間:2000~2004年度
研究担当者:伊藤寿、市ノ木山浩道

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