イネ穂いもち圃場抵抗性遺伝子Pb1の穂いもち発病抑制効果の定量的評価


[要約]
Pb1遺伝子のいもち病発病抑制効果は葉いもち<止葉葉いもち<穂いもちの順に高くなる。Pb1は幅広い穂いもち発生条件下で罹病籾率を1/10以下に低減する高い発病抑制効果(防除価93)を示す。Pb1は減収軽減効果が高く、品質、食味低下の軽減効果もある。

[キーワード]イネ、いもち病、穂いもち、圃場抵抗性、抵抗性遺伝子、発病抑制効果

[担当]愛知農総試・作物研究部・作物グループ、北海道農研・生産環境部・ウイルス病研究室、愛知農総試・山間農業研究所・稲作グループ
[連絡先]電話0561-62-0085
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・水田畑作物
[分類]科学・普及

[背景・ねらい]
 インド型イネ「Modan」に由来する穂いもち圃場抵抗性遺伝子Pb1(藤井ら1999、2000)は、Pb1保有品種の普及後20年以上に亘って抵抗性崩壊がなく日本全国で安定した穂いもち圃場抵抗性を発現し続けている(藤井2004)ため、穂いもち抵抗性育種に極めて有用である。本情報ではPb1の作用力を明らかにするため、Pb1座に関する準同質遺伝子系統(NILs)を作出して、(1)Pb1の葉いもち及び穂いもちに対する抵抗性発現の違い、(2)穂いもち発病抑制効果、(3)穂いもち被害による収量及び品質低下を軽減する効果を定量的に解明する。

[成果の内容・特徴]
1. Pb1遺伝子は、葉いもち<止葉葉いもち<穂いもちの順に発病抑制効果が高まり、イネの発育ステージの進捗に応じてより強い圃場抵抗性を発現する特徴を有する(表1)。
2. Pb1の罹病籾率低減効果を示す「防除価」は平均93で、本遺伝子は幅広い穂いもち発生条件下において罹病籾率を1/10以下に低減する極めて高い発病抑制効果を示す(表1図1)。
3. 穂いもち多発生条件では、Pb1保有系統と持たないNILとの精玄米収量の比は2.4~16.2倍と大きく、より多発な条件で減収軽減効果は高い(図2)。
4. 穂いもち多発条件下で、Pb1保有系統は持たないNILより精玄米歩合が高く(86.4%>54.4%)、千粒重が大きく(20.8g>19.7g)、玄米蛋白質含量が低く(9.0%<9.7%)、いずれの差も1%水準で有意である。このように、Pb1の穂いもち発病抑制効果により、品質(粒張り)及び食味低下を軽減する二次的効果が認められる。

[成果の活用面・留意点]
1. Pb1遺伝子を用いた穂いもち抵抗性育種には、Pb1の有無を精度99%で識別できる共優性のDNAマーカー(遠山ら1998、特許3153889)が利用可能である(早野・藤井2003)。
2. Pb1遺伝子は葉いもちに対しては強い圃場抵抗性を発現しないため、葉いもちが多発する環境でのいもち病抵抗性の強化には、Pb1に加えて別の圃場抵抗性遺伝子を併せて導入育種することが有効である。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:良食味・病害虫複合抵抗性水稲品種の育成
予算区分:県単
研究期間:2000~2001年度
研究担当者:藤井 潔、早野由里子、杉浦直樹、林 長生、井澤敏彦、岩崎眞人
発表論文等:1)藤井ら(2001)育種学研究 3(別1):114.、2)藤井ら(2002)育種学研究 4(別1):224.、3)Fujii et al. (2002) 3rd International Rice Blast Conference Abstracts :63.、4)藤井(2004)農林水産技術研究ジャーナル27(7):20-26.

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