γ-アミノ酪酸(GABA)が多い発芽玄米用糖質米新品種候補「北陸169号」


[要約]
「北陸169号」は寒冷地南部では中生の中に属する粳種で、短稈、偏穂重型の糖質米系統である。重量当たりのGABA含量が一般品種の3倍前後で、水溶性多糖(植物グリコーゲン)を乾物重当たり30%蓄積することから、発芽玄米および発芽玄米を添加したおにぎり、おはぎ等機能性食品としての加工利用が期待される。

[キーワード]イネ、機能性成分、GABA、発芽玄米、糖質米

[担当]中央農研・北陸地域基盤研究部・稲育種研究室
[連絡先]電話025-526-3239
[区分]関東東海北陸農業・北陸・水田畑作物、作物・稲
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 近年、消費者の健康志向から、血圧降下作用のあるGABAを豊富に含む発芽玄米は、現在、年間1万5000トンの流通量と150億円を超える市場を形成するに至っている。そこで、発芽玄米の一層の消費拡大を図るため、GABAの量が多く、嗜好性を高めた発芽玄米用品種を育成する。

[成果の内容・特徴]
1. 「北陸169号」は、1989年中央農業総合研究センター・北陸研究センター(旧北陸農業試験場)において新形質米品種の育成を目的として、糖質変異系統の「EM5」と「奥羽331号」(後の「ふくひびき」)を交配した後代から育成された糖質米系統である。
2. 出穂期は「コシヒカリ」より3日程度遅く、育成地では“中生の中”、成熟期は出穂後30日を目途とするため“早生の晩”に属する粳種である(表1)。
3. 稈長は“短”、穂長は中”、穂数は“やや少”、草型は“偏穂重型”で、脱粒性は“難”である(表1)。
4. 玄米の厚さは約1.5mmで極薄く、千粒重は15g程度と極軽く、収量は、「コシヒカリ」、「キヌヒカリ」より少なく、これらの品種の約60%である(表1)。
5. 発芽時の重量あたりのGABAの含有量は、「コシヒカリ」の3倍前後であり、水溶性多糖(植物グリコーゲン)を、乾物重あたり約30%含有する(表2)。
6. いもち病真性抵抗性遺伝子はPiaPibを併せ持つと推定され、葉いもち圃場抵抗性は“やや強”、穂いもち圃場抵抗性は不明である。穂発芽性は“極易”、障害型耐冷性は“弱”である。
7. 出穂後29日目から、籾の発芽率が上昇し、一方、籾重は、出穂後30日前後まで増加し、その後、一定となるので(図1)、出穂後30日を目途に収穫することで、穂発芽による品質低下を防ぐことができる。

[成果の活用面・留意点]
1. 多量のGABAと水溶性多糖の甘みを持つ特性を活かし、発芽玄米、発芽玄米を添加したおにぎり、おはぎ等機能性食品の加工利用素材としての普及を図り、米の需要拡大に繋げる。
2. 適応地域は「コシヒカリ」等の熟期の作付が可能で、冷害の危険性の少ない東北南部、北陸および関東以西である。
3. 穂発芽による品質低下を防ぐため、出穂後30日を目途に収穫する。
4. 粒厚が極端に薄く、通常の選別が困難なため、適期刈り取りに努め、着色米の発生を最低限に抑える。また、胴割れ米を防ぐため乾燥調整に留意する。
5. PiaPibのいもち病真性抵抗性遺伝子を持つため、現在のところ、いもち病の発病は認められないが、いもち病菌の新レースの出現による発病の可能性があるため、発病が認められた場合、直ちに防除を行う。
6. 籾重が軽いため、苗箱あたりの播種量を一般品種の7割程度とする。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:寒冷地向き低アミロースを主体とした新形質米品種の育成
課題ID:03-12-01-01-08-04
予算区分:ブランドニッポン5系、重点研究強化費、21世紀プロ5系、次世代稲作、新形質米
研究期間:1989~2005年度
研究担当者:三浦清之、笹原英樹、後藤明俊、重宗明子、上原泰樹、小林 陽、太田久稔、清水博之、福井清美、小牧有三、大槻 寛

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