染色体断片置換系統群を活用した新育種法の実証


[要約]
染色体断片置換系統群(CSSLs)を用いることで、表現型には現れないインド型品種の有用な量的遺伝子座(QTL)を見出すことができるようになる。さらに、その有用遺伝子のマッピングおよび準同質遺伝子系統(NIL)の育成をCSSLsの評価から短期間(4年後)に完了することが可能であり、コシヒカリなど市場流通性の高い品種を遺伝背景に持つCSSLsを用いることで品種育成の早期化を図ることができる。

[キーワード]染色体断片置換系統群、遺伝子資源、QTL、マッピング、準同質遺伝子系統

[担当]富山農技セ・農業試験場・作物課
[連絡先]電話076-429-2114
[区分]関東東海北陸農業・北陸・水田畑作物
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 インド型品種をはじめとする外国稲は、遺伝資源としての潜在能力に期待はあるものの劣悪形質が多いため、これまでの育種事業では病害抵抗性のような主導遺伝子の利用にとどまっている。そこで、コシヒカリの遺伝的背景をもち、染色体の一部のみがインド型品種Kasalathに置換された染色体断片置換系統群(CSSLs:Chromosome Segment Substitution Lines)を用いることで、遺伝背景を揃えた条件でのQTLの検出を試みた。さらに、検出した有用QTLのマッピングおよび準同質遺伝子系統(NIL)の育成を短期間で完了するための工程を検証した。

[成果の内容・特徴]
1. CSSLs39系統を用いた調査の結果、Kasalathの対立遺伝子が、1穂着粒数を増加させる(着粒数増加)QTLを第1および第7染色体に、玄米外観品質を向上させる(品質向上)QTLを第2染色体に、味度値を向上させる(味度値向上)QTLを第10染色体に、短稈化させる(短稈化)QTLを第11染色体にそれぞれ検出した(図1)。このように、CSSLsを用いた形質評価によって、Kasalathの直接評価で確認できる有用なQTL(着粒数増加)だけでなく、表現型には現れない形質についても有用なQTL(品質向上、味度値向上、短稈化)を見出すことが可能となる。
2. コシヒカリと有用QTLをもつCSSLとの交配に由来するF2集団を用いたQTL解析およびF3系統を用いた後代検定により、QTLに連鎖するマーカーを見出すことができる(図2)。さらに、近傍のDNAマーカーを用いた解析により、QTLの存在領域を絞り込むこと(マッピング)ができると同時に、マッピングした解析材料の中から、QTLを含み、かつ、Kasalath型染色体領域をできるだけ小さくもつNILを選抜できる(図2)。
3. モデルとして解析を進めた第11染色体の短稈化QTLでは、Kasalathの染色体領域を18cMもつNIL(F2-11-2-13)を選抜し(図3)、評価を行った結果、短稈化NILの稈長は79.8cmとコシヒカリと比べて3.7cm短くなった(表1)。
4. DNAマーカーを活用することにより幼苗における選抜も可能であり、冬期間の個体選抜を加えることにより、CSSLsの形質評価から4年後にはNILsの評価が可能となる(図4)。

[成果の活用面・留意点]
1. これまで遺伝資源として活用し難かったインド型品種等を遺伝子資源として効果的に利用できるようになる。
2. 目標とするNIL像にもよるが、インド型品種の染色体領域が15cM程度のNILを選抜するためには、F2集団で約100個体を用いる必要があり、さらに染色体領域を小さくするためには、より多い個体数を用い、多様な遺伝子型をもつ個体を得ておく必要がある。
3. 育成したNILの目的形質以外の農業形質に関しては、生産力検定など十分な評価が必要である。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:インド型品種Kasalathの染色体断片移入育種法の開発 b)有用遺伝子に関する育種法の開発
予算区分:DNAマーカーによる効率的な新品種育成システムの開発(受託)
研究期間:2002~2004年度
研究担当者:宝田研、蛯谷武志、山本良孝
発表論文等:1)蛯谷ら(2002) 北陸作物学会報 第38号別号:1
      2)蛯谷ら(2003) 育種学研究 第5巻別冊2号:359

目次へ戻る