輪ギクの企業的経営体への段階的発展モデル


[要約]
年2作体系の輪ギク専作農家が、年3作の大規模経営に発展するためには、年3作に切り替えて徐々に規模拡大していく方法と、空きハウスを集積して面積拡大をはかり、その後に年3作を導入していく2通りの方法がある。

[キーワード]輪ギク経営、高回転型経営、経営発展モデル、大規模経営、企業的経営

[担当]静岡農林研・企画経営部・経営研究
[代表連絡先]電話:0538-36-1553
[区分]関東東海北陸農業・経営
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
輪ギク産地では、産地の中心となるべき企業的経営体を育成する必要がある。このため全国有数の花き産地で、特にキクの産出額が多い静岡県西部地域の輪ギク専作経営を事例として段階的発展モデルについて考察し、生産者の指標とする。また、モデルを生産者に示して意見交換を行い、実現のために行政・試験研究が果たすべき役割を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 静岡県西部の輪ギクを主幹作目とする認定農業者38経営体の経営概要調査結果から、輪ギクの慣行経営を施設面積40a、年間作付け数2作、労働力は家族2人の専作経営に設定した。静岡県で年2作が主流である理由は、物日需要に合わせて相場の高い時期に出荷していたためであり、年3作に必要な施設整備がなされていない。しかし、近年では物日の相場も落ちてきており、年間雇用を前提とした周年出荷のモデルを作成した。
2. 輪ギク産地の中心となるべき企業的経営体の経営型を、愛知県や福岡県のトップレベルの生産者の形態である大規模高回転型経営と定め、利潤が確保できる経営を目標とした。目標に至るまでの過程として、静岡県西部地域で実際に規模拡大途上にある経営体を参考事例として試算を行い、発展段階のモデルを作成した。
3. 当該地域にも、ハウスを建て替えて、年3作の栽培体系を導入する生産者が現れており、慣行経営を全て年3作とした高回転型経営を第2段階のモデルとした。総労働時間は4,906時間となり雇用の導入が必要になるものの、農業所得は慣行に比べて約1.5倍に増加する(表1
4. 近年、高齢化により、キク生産を断念する生産者も多く、空きハウスが増加している。当該地域にはその空きハウスを借りて、施設面積2haまで規模拡大をしている生産者も存在する。ここでは、1haまで規模拡大した大規模借地経営を第2段階のもうひとつのモデルとした。総労働時間は9,667時間となりやはり、雇用の導入が必要となるものの、農業所得8,466千円を確保できる(表1)。
5. 大規模借地経営の場合、軒高の低いパイプハウスでは年3作は難しいが、長期借地契約をしたうえでハウスを新設して装備を充実させ、大規模高回転型経営に移行すれば、9,411千円の所得をあげることができ、利潤も発生する。高回転型経営から規模拡大をしていくことにより、大規模高回転型経営に到達する展開も考えられる(表1)。
6. 慣行経営から第2段階、さらに大規模高回転型経営に到達する際にクリアすべきハードルには、空きハウスの集積、高回転生産技術の導入、雇用の導入等がある(図1)。
7. モデルの実現のため、試験研究機関は低コストハウスの研究や栽培期間の短い品種の選定、行政機関としては補助事業や制度資金での支援、農業団体と連携した空きハウスの利用調整や貸借期間の長期化に向けた支援措置の検討が必要である(表2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 輪ギク専作の認定農業者が経営改善計画を作成する際などに活用可能である。
2. 活用時には、輪ギクの採花本数、販売単価や燃料・生産資材費、労賃等を、その時点での地域の実情に合わせる必要がある。

[具体的データ]

表1 輪ギク専作経営段階的発展モデル
図1 輪ギク専作経営段階的発展模式図
表2 モデル実現のために必要な支援

[その他]
研究課題名:花き経営の段階的発展モデルの作成
予算区分:県単
研究期間:2006~2007年度
研究担当者:鈴木康詞

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