分娩前の血中総コレステロール値の違いに基づくケトーシス予防法


[要約]
分娩14日前の血中総コレステロール(TCho)80mg/dl未満の乳牛はケトーシス発症リスクが高く、グリセリンとバイパスアミノ酸の併用投与によってケト-シスを予防できる。一方、分娩14日前のTCho80mg/dl以上の乳牛はケトーシス発症リスクが低く、予防措置を行わなくてもケトーシスを発症しない。

[キーワード]乳用牛、ケトーシス、総コレステロール、NEFA、3-メチルヒスチジン

[担当]静岡畜研・安全生乳プロジェクトスタッフ
[代表連絡先]電話:0544-52-0146
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]研究・普及

[背景・ねらい]
乳牛は分娩前の血中総コレステロール値(TCho)によって、分娩後のケトーシス発症リスクが異なる。そこで、分娩前のTChoが異なる2群を設定し、それぞれにグリセリンとバイパスアミノ酸を併用投与し、ケトーシス予防効果の違いを検討する。

[成果の内容・特徴]
1. 分娩14日前のTCho80mg/dl未満をケトーシス発症のハイリスク群(H群)、80mg/dl以上をローリスク群(L群)とし、それぞれに無投与区とグリセリン+バイパスアミノ酸投与区(GL+BA区)を設定する。

H群(分娩14日前のTCho80mg/dl未満)・・・無投与区(3頭)、GL+BA区(5頭)
L群(  〃   TCho80mg/dl以上)・・・無投与区(4頭)、GL+BA区(5頭)

2. グリセリン(GL)は25%ペレット製剤を使用し、400g/d/headを分娩14日前~分娩日(14日間)投与する。バイパスアミノ酸(BA)は加熱大豆製剤にバイパスメチオニンを強化したものを使用し、400g/d/headを分娩7日前~分娩14日後(21日間)投与する(図1)。
3. H群では無投与区3頭すべてがケトーシスを発症するが、GL+BA区ではケトーシスは発症しない。一方、L群では無投与区、GL+BA区ともケトーシスは発症しない(表1)。
4. H群では分娩日における無投与区の血中遊離脂肪酸(NEFA)がGL+BA区より高い傾向を示す。しかし、L群では両区間の血中NEFAに差はみられない。
5. H群では、分娩14日後における無投与区の血中3-メチルヒスチジンがGL+BA区より高い(P <0.05)(図2)。しかし、L群では両区間の血中3-メチルヒスチジンに差はみられない。(図3)

[成果の活用面・留意点]
1. 分娩14日前のTCho80mg/dl未満の乳牛はケトーシス発症リスクが高く、これらの牛へのグリセリンとバイパスアミノ酸併用投与はケトーシス予防に有用である。
2. 一方、分娩14日前のTCho80mg/dl以上の乳牛はケトーシス発症リスクが低く、予防措置をしなくても発症しない。(ただし、TChoは地域、農場によって標準範囲が異なることに留意する。)
3. 周産期疾患(ケトーシス等)の予防試験を行う場合には、分娩前のTCho等によって発症リスクを評価し、試験牛を選定する必要がある。
4. 乳牛のケトーシス予防法として有効であり、酪農家の経営被害を軽減できる。

[具体的データ]
図1 グリセリン(GL)とバイパスアミノ酸(BA)の投与量および投与日数
表1 ケトーシスの発生状況
図2 H群における血中3-メチルヒスチジン  図3 L群における血中3-メチルヒスチジン

[その他]
研究課題名:乳牛における血中3-メチルヒスチジン濃度を指標とした代謝病予防・治療法の確立
予算区分:県単
研究期間:2004~2006年度
研究担当者:赤松裕久、土屋貴幸、佐野文彦、笠井幸治

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