超低温保存前後の呼吸量の比較による牛胚の非侵襲的品質評価


[要約]
超低温保存した牛体外生産胚の保存前と加温融解後の呼吸量を比較することで、呼吸量の有意な低下が認められる場合は生存細胞の割合が減少したことが推測でき、凍結融解後の胚の非侵襲的な品質評価法として呼吸量測定は利用できる。

[キーワード]牛、体外生産胚、超低温保存、呼吸量

[担当]神奈川畜技セ・畜産工学部
[代表連絡先]電話:046-238-4056
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]研究・参考

[背景・ねらい]
超低温保存した牛胚の加温・融解後の胚の品質評価は顕微鏡による形態観察によって行われている。最近、牛胚の客観的な品質評価法として呼吸量を測定する方法が利用されている。本研究では、超低温保存した体外生産胚の保存前、加温・融解後の呼吸量を比較することで、超低温保存後の胚の品質評価が可能であるかどうかを検討する。

[成果の内容・特徴]
1. 体外生産胚の作出は成熟培養に5%牛胎仔血清(FCS)添加TCM199、媒精にIVF100(機能性ペプチド研究所)、発生培養に5%FCS加合成卵管液を用いる。供試胚は、媒精後7日目の胚盤胞(31個)である。
2. ガラス化法は、25%エチレングリコール(以下、EG)25%ジメチルスルホオキシド及び0.4%BSA添加修正PBSをガラス化液とし、加温後にストロー内に充填した5%EGと0.15Mシュークロース及び20%子牛血清(CS)添加修正D-PBSで耐凍剤を希釈し、緩慢凍結法は、1.8MEG+0.1Mトレハロース+0.4%BSAを含む20%CS加D-PBSを凍結液とする。加温・融解後の胚は、20%CS加D-PBSで洗浄する。
3. 呼吸量の測定には、受精卵呼吸量測定装置((株)機能性ペプチド研究所)を用いる。
4. 加温・融解後の胚をプロピウムイオダイドとヘキスト33342で染色し生存細胞と死滅細胞を計数したところ、ガラス化法では生存細胞数が緩慢凍結法に比べて有意に多く、死滅細胞数は有意に少ない(表1)。
5. 保存30分前と融解・加温15分後の胚の呼吸量を測定したところ、加温・融解後の呼吸量はいずれも低下するが、緩慢凍結法では保存前と比較して有意に低下する(表2)。
6. ガラス化法と比べて、加温・融解後に総細胞数に対する生存細胞の割合の有意な減少(図1)が認められる緩慢凍結法では、超低温保存前からの呼吸量の低下の割合も大きい(図2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 呼吸量の低下により超低温保存後の生存細胞数の減少が推測できることから、適切な保存法を探索することに応用できる。
2. 超低温保存前後の呼吸量変化と受胎率との関係についての詳細な調査が必要ある。

[具体的データ]
表1 超低温保存した胚の加温・融解後の細胞数
表2 超低温保存した胚の保存方法別呼吸量の比較
図1 超低温保存した胚の加温・融解後の生存細胞数の割合  図2 超低温保存した胚の呼吸量の低下割合

[その他]
研究課題名:牛胚の呼吸量測定による培養液や凍結液の評価
予算区分:県単
研究期間:2007年度
研究担当者:坂上信忠・秋山 清・仲澤慶紀

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