肉質等級「4」以上の雌肥育牛卵子を使って生産する子牛の肉質は優れる


[要約]
肉質等級が「4」以上である黒毛和種の卵子由来体外受精胚(個体別胚)から生産した和牛の肉質等級は優れる。

[キーワード]肉質等級「4」以上、黒毛和種由来卵子、体外受精胚、個体別培養

[担当]三重畜研・家畜改良繁殖 
[代表連絡先]電話:0598-42-2029
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
優良な肉質生産を目的とした黒毛和種(和牛)の育種改良は、そのほとんどを種雄牛の改良に頼っているのが現状である。雌牛の肉質がその子牛に影響することは遺伝的要因を考慮すると十分に推察できるが、一般に雌牛は繁殖牛に供されるため、その雌牛の肉質を把握したうえで体外受精胚を生産することはできない。そこで、三重県特有の「和牛雌牛の肥育」形態を活用し、肉質等級「4」以上の和牛卵子から生産した体外受精胚(個体別胚)由来牛が肥育後に良好な肉質に仕上がるかどうかについてその有用性を実証する。

[成果の内容・特徴]
1. 子牛生産には主に安福165-9、美津福、北国7の8、紋次郎、菊安、安福栄、東龍等の凍結精液を使用し、誕生した子牛は酪農家が育成・肥育する。と畜後の肉質等級およびBMSに関しては種雄牛差は見られない。
2. 個体別胚由来牛の肉質等級およびBMSは、体内胚由来牛(ET牛)やプール培養体外受精胚由来牛(P-IVF)に比べて有意に高い(図1)。
3. 個体別胚由来牛の47.7%(21/44頭)が肉質「5」等級、「4」等級以上の上物率は77.3%(34/44頭)となり、ET牛やP-IVF牛よりも有意に高い(図3)。

[成果の活用面・留意点]
1. ET牛、P-IVF牛、個体別胚由来牛の肉質成績は、新鮮胚または凍結胚から誕生した牛の成績をまとめたものである。
2. 卵巣採材時には10頭以上の雌牛から卵巣を採材することで、1個体からの卵子採取数が少ない場合や肉質「4」等級以上のドナー雌牛が少ない場合に対応できる体制で臨むことができる。
3. 肉質が良好な和牛の安定的生産に寄与できる技術である。
4. データの集積により、雌和牛が有する産肉能力がどれだけ子牛に影響するか把握できる
5. 卵子提供牛のロース芯面積、枝肉重量および血統なども考慮して個体別胚の生産を行うことで、より肉質成績が良好な牛の生産が期待できる。
6. 個体別胚由来牛が子牛登記を取得するには、卵巣を採材するドナー雌牛の基本登録を29ヶ月齢までに行い、出荷時までに遺伝子型検査をする。そして個体別胚由来牛の遺伝子型がドナー雌牛および種雄牛の遺伝子型と一致することを確認する必要がある。

[具体的データ]
図1 繁殖手法別の肉質等級の比較 図2 繁殖手法別のBMSの比較
図3 繁殖手法別生産牛の肉質等級割合

(島田浩明)

[その他]
研究課題名:牛の良質胚多量確保技術の開発
予算区分:県単
研究期間:1993~2009年度
研究担当者:島田浩明、石井利通、榊原秀夫、余谷行義、西 康裕、水谷将也

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