交雑種去勢牛では雌牛より血中ビタミンA濃度が低下しやすい


[要約]
飼料中ビタミンA給与が制限された交雑種肉用牛の血中ビタミンA濃度を雌雄で比較すると、去勢牛の方が低い値で推移する。このため去勢牛においては、ビタミンA制限の時期を雌牛より短くする、欠乏症の早期発見に努めるなどの注意が必要である。

[キーワード]交雑種肉用牛、肥育、ビタミンAコントロール

[担当]愛知農総試・畜産研究部・牛グループ
[代表連絡先]電話:0561-62-0085 
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]研究・参考

[背景・ねらい]
肉牛生産現場において、ビタミンA(V.A)コントロール技術が広く行われているが、交雑種(F1)では、和牛における手法を参考にしながら農家それぞれで独自に実践しているのが実情である。日本飼養標準2008年版によれば、和牛去勢牛とF1去勢牛ではV.A要求量が異なる上、F1雌牛の要求量が示されていないなど不明な点も多いため、F1におけるV.Aコントロール技術の確立が必要となっている。本研究成果情報は、V.A制限下におけるF1雌牛と去勢牛の血中V.A濃度の違いを明らかにするものである。

[成果の内容・特徴]
1. 雌牛(n=5)、去勢牛(n=6)とも、9か月齢に肥育を開始する。10か月齢からV.Aを含まない濃厚飼料およびバミューダグラスストローを給与し、V.A制限を開始する。8か月齢から2か月おきに採血を行い、血中V.A濃度を測定する。血中V.A濃度は、8か月齢時には雌雄で差はないが、その後去勢牛において早く減少し、低濃度で推移するする傾向が見られる(図1)。
2. 月齢ごとの濃厚飼料摂取量は、雌牛で15か月齢、去勢牛で14か月齢前後から減少が見られる。肥育後期の摂取量は、去勢牛の方が少ない傾向が見られる(図2)。これはV.A欠乏に原因があると考えられる。なお、摂取量が群全体で急激に減少した場合にV.A欠乏と判断し、V.A経口投与剤を1頭あたり20ml(50万IU)給与する。
3. 体重の日増体量(DG)は、肥育前期では去勢牛が雌牛より優れるが、肥育後期では雌雄が逆転し、肥育期全体を通してのDGはほぼ同じである(表1)。去勢牛で肥育後期の伸びが劣るのは、濃厚飼料摂取量の減少に原因があると考えられる。
4. と殺月齢は雌牛26か月、去勢牛24か月と、雌牛を長く肥育する。枝肉重量は雌牛と去勢牛でほぼ同じである。肉質については、どの項目においても有意差は認められないが、ロース芯面積、バラの厚さ、BMSにおいて雌牛の方が優れる傾向がある(表2)。これは濃厚飼料摂取量の低下が影響していると考えられる。

[成果の活用面・留意点]
1. 交雑種肉用牛のV.Aコントロール技術に関する文献は少ないため、雌雄の差が明らかになることで、現場での技術導入、技術の効果的利用につながる。
2. 血中V.A濃度の推移には個体差が見られる。このため、牛の観察を行い、V.A欠乏に適切に対処する。また、雌雄に関わらず過度のV.A欠乏は生産性を著しく落とすため、注意が必要である。
3. 本研究成果情報では、血中V.A濃度は肥育開始時から低く、このため肥育後半にも濃度の回復はみられない。これは、育成時において十分なV.A量を給与する必要性を示唆するものである。

[具体的データ]
図1 血中V.A濃度の推移 図2飼料摂取量の推移
表1 発育成績
 表2 枝肉および肉質成績

(清 健太郎)

[その他]
研究課題名:交雑種肥育牛におけるビタミンAコントロール技術の確立
予算区分:県単
研究期間:2006~2008年度
研究担当者:清健太郎、長渕政広、森下 忠、大橋秀一
発表論文等:清ら、(2009)愛知農総試研報、41:99-103

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