点滴かん水やマルチによるニホンナシ「あきづき」大苗の初期生育の向上効果
|
|
| [要約] |
ニホンナシ「あきづき」大苗を定植した後に、点滴かん水やマルチを設置すると、新しょうの生育は慣行に比べて向上する。この要因としては、点滴かん水区では土壌の水分含量が、マルチ区では地温が慣行に比べて高く推移することが挙げられる。 |
[キーワード]ニホンナシ、大苗、点滴かん水、マルチ |

[担当]千葉農林総研セ・果樹研究室
[代表連絡先]電話:043-291-9989
[区分]関東東海北陸農業・果樹
[分類]技術・参考 |
|
| [背景・ねらい] |
主力品種である「幸水」は、樹齢が30年を過ぎると収量低下や果実の小玉化が顕著になり生産性が低下するため、若木への改植が必要である。改植後の成園化を促進するため、苗木圃場で主枝を直立に伸長させた大苗を用いる技術が開発されている。しかし、大苗は定植後の生育が不良になりやすく、改植に失敗する事例が散見される。そこで、「あきづき」大苗を定植後に、少ない水量で効率よくかん水することができる点滴かん水や被覆部位の保温に効果があるポリエチレンフィルムを用いたマルチを設置することにより、大苗の初期生育を促進する技術を開発する。 |
![]()
[成果の内容・特徴] |
| 1. |
「あきづき」大苗(2年生)を3月に定植し、4月後半から11月にかけて、点滴かん水した区とポリエチレンフィルムで被覆した区を設けた。定植1年目の新しょうの長さ及び基部径、発生本数の生育は慣行に比べて増加する(表1)。 |
| 2. |
.定植2年目も同一の樹に対して点滴かん水とマルチ被覆を4月後半から11月にかけて行った。定植2年目の新しょうの発生本数と総伸長量は、慣行に比べて増加する(表2)。 |
| 3. |
点滴かん水をすると、土壌の体積含水率は慣行に比べて高く推移するが(図1)、地温は慣行と同程度である(図2)。定植1~2年目の生育を考えると、土壌水分は高い方が良く、この時期の点滴かん水は効果が高いと考えられる。 |
| 4. |
マルチをすると、地温は慣行に比べて高くなるが(図2)、土壌の体積含水率は慣行に比べて低くなる(図1)。根が最も伸長する5月における地温が根の生育に好適な20℃前後に維持され、樹の生育が向上すると考えられる。また、体積含水率の平均は植物が容易に水を吸収するのに適正な範囲内であり、下限値も30%前後であることから、樹の生育に負の影響を及ぼしたとは考えられない。 |
|
![]()
[成果の活用面・留意点] |
| 1. |
点滴かん水の水量は1樹当たり1年目が5L/日、2年目が10L/日で、4月後半から11月まで処理する。なお、定植2年目の土壌の体積含水率は適正の範囲である32~45%より高いため、最適な水量を検討する必要がある。 |
| 2. |
マルチは、晩霜の発生時期を避けて4月後半から11月まで、ポリエチレンフィルム(厚さ0.02mm、透明)を用いて主幹部を中心に1年目が1.4m四方、2年目が2.0m四方を被覆する。また、マルチは夏季の除草を省略でき、コストも廉価である。 |
| 3. |
1樹当たり年間の窒素成分量は定植1年目が300g、2年目が400gである。 |
|
![]()
[具体的データ] |
|
|
| [その他] |
研究課題名:ニホンナシ改植技術の特性解明と改善
予算区分:県単
研究期間:2005~2009年度
研究担当者:戸谷智明、川瀬信三、北口美代子
発表論文等:戸谷ら(2011)千葉農林総研セ研報3
|
|
| 目次へ戻る |