中山間地域の扇状地における精密土壌図(1/5000)の作成と栽培管理への活用
|
|
| [要約] |
自然条件下では火山放出物未熟土が分布する扇状地において、基準断面を設定し、地形解析により、微地形の影響を反映した精密土壌図を作成した。これにより、圃場単位の土壌特性区分が示され、区分毎の施肥や水管理のための適正な管理指針を策定できる。 |
[キーワード]精密土壌図、地形区分、農耕地土壌分類、土壌管理 |

[担当]群馬農技セ・環境作物部・環境安全係
[代表連絡先]電話:027-269-9121
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・土壌肥料
[分類]技術・普及 |
|
| [背景・ねらい] |
中山間地域などの傾斜地では、侵食や人為的な影響により圃場毎に土壌特性が異なる場合が多くある。公表されている5万分の1土壌図では、この違いを判別できないため、土壌情報を作物栽培管理に活用しきれていない。そこで、群馬県片品村を代表する扇状地を対象とし、地形解析により精密土壌図を作成し、土壌情報の作物栽培管理への活用を促す。 |
![]()
[成果の内容・特徴] |
| 1. |
榛名二ツ岳軽石が埋没層として出現する群馬県北東部(図1)には、表層が粗粒質の火山放出物未熟土に区分される土壌が分布する。過去の分類調査では「黒ボク土」に区分されていたが、農耕地土壌分類第3次改訂版における分類の更新に伴い、現地調査を実施して精密土壌図(1/5000)を作成すれば、より精緻な区分が可能である。 |
| 2. |
扇状地地形に広がる農地の精密土壌図作成にあたり、侵食や再堆積の影響が少ないことを確認した扇頂部の平坦な林床下の断面を 基準断面と設定する。その後、圃場内の精密調査を実施し、さらに、丹羽ら(2006)の方法に従い、10mメッシュデジタル標高データを解析することによって微地形区分に対応する詳細土壌区分が可能である。 |
| 3. |
対象地の尾根部は、基準断面に比べて侵食や深耕などの影響により軽石層が薄く、軽石が表層に多く混入するため腐植が少ないことから、「普通火山放出物未熟土」となる。平坦・谷部は、侵食に伴う再堆積や均平化などで表層が厚く、「腐植質火山放出物未熟土」となる。造成区は、表層では軽石層や埋没腐植層が単一の層として認められず、混層となっていたり、元々下層にあった褐色ローム層によって構成されており、リン酸吸収係数が大きい「普通黒ボク土、造成相」に区分される(図2、図3)。 |
| 4. |
尾根部に分布する「普通火山放出物未熟土」は、軽石層の出現深度が浅いため、深耕すると軽石の作土への混入が起こり、作土の理化学性が著しく変わるおそれがある。平坦・谷部の「腐植質火山放出物未熟土」および尾根部の「普通火山放出物未熟土」は、粗粒な火山放出物を多く含み、表層の仮比重が大きい。そのため、過湿・過乾のおそれがあり、水管理に注意を要する。「普通黒ボク土、造成相」は、「火山放出物未熟土」に比べCECやリン酸吸収係数が大きいなど土壌特性が大きく異なる。したがって、リン酸肥料などの施用量を別に算定する必要がある。このように中山間地域の扇状地において精密土壌図を作成すれば、圃場単位の土壌区分が示され、 区分毎のきめ細かい施肥量の算定や水管理の最適化など、適正な土壌管理が可能となる(表1)。 |
|
![]()
[成果の活用面・留意点] |
| 1. |
調査対象とした扇状地の面積は、約60 haである。本手法を適用可能な同種の「火山放出物未熟土」は、片品村で約540 ha、利根沼田地域では約5300 ha分布している。 |
| 2. |
本地域は、自然条件下では「火山放出物未熟土」が分布する。「普通黒ボク土、造成相」の分布は、人為的な影響が大きく現在の地表面の標高や形状からの地形解析では予測できないため、本成果の精密土壌図では実際に調査して分布を確認した範囲のみ図示している。 |
|
![]()
[具体的データ] |
|
|
| [その他] |
研究課題名:地域資源循環型農業のための環境保全型輪作による土壌管理技術の開発
予算区分:県単
研究期間:2006~2009年度
研究担当者:鹿沼信行、庄司 正、小林逸郎、戸上和樹(東北農研)、神山和則(農環研)、谷山一郎(農環研)、大倉利明(農環研)
発表論文等:鹿沼ら(2010)ペドロジスト54(2):73-82
|
|
| 目次へ戻る |