栃木県の黒ボク土畑地における深さ5mまでの土壌への硝酸態窒素の浸透実態


[要約]
栃木県の畑地土壌は、陰イオン交換容量に比べ硝酸、塩化物及び硫酸イオンの合計が各層位で、過剰に存在している。また、脱窒作用も表層土に限定される。作物に吸収されない硝酸態窒素の多くは、下層に浸透する。

[キーワード]黒ボク土畑地、硝酸態窒素、陰イオン交換容量、脱窒

[担当]栃木農試・環境技術部・環境保全研究室
[代表連絡先]電話:028-665-7148
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・土壌肥料
[分類]研究・参考

[背景・ねらい]
持続的な農業生産を行うために、農耕地から系外への栄養塩類の流出を最小限とすることが求められる。特に硝酸態窒素は、環境基準が設定されており、土壌及び施肥管理の適正化が求められる物質である。陰イオン交換での吸着による浸透遅延や下層での脱窒による浸透低減の可能性が国内外の他地域で指摘されている。そこで、栃木県内に分布する主要な畑土壌24地点(ナシ、ナス、ホウレンソウ、ニラ、ハクサイ、サトイモ及びコンニャクほ場)について、硝酸態窒素濃度の鉛直分布を深さ5mまで調査し、合わせて陰イオン交換容量(AEC)及び脱窒酵素活性との関連を評価する。

[成果の内容・特徴]
1. 脱窒酵素活性は,総じて表層土(0~0.25m )で高い。一方、0.25m以深ではほとんどゼロに近く(図1)、脱窒作用による窒素浄化が表層土に限定されることが示唆される。
2. AECは表層土で0.7cmol/kg(平均値)である。腐植層下部の褐色土壌(約1~2mに分布)で2~3.5cmol/kg程度の値を示す場合もあるが、それ以深では1cmol/kg程度かそれ以下である。一方、硝酸、塩化物及び硫酸イオンの合計/ AEC比は深さ1mまで2以上の値を、1m以深でも1.5と同等以上の値を示し(表1)、各層位でAECに比べ過剰に存在している。このことは、陰イオン吸着による硝酸態窒素浸透の遅延効果が低下していることを示唆する。
3. 硝酸態窒素は、下層でも表層土と同等以上の高濃度で検出される場合がある(表1)。
脱窒作用による窒素浄化が表層土に限定されること、陰イオン吸着による硝酸態窒素浸透の遅延効果の低下に帰因すると考えられる。
4. 黒ボク土における硝酸態窒素の浸透速度が年間1m内外である知見があるため、過去3年間における化学肥料及び有機物由来の窒素投入量と深さ3mまでの土層内の硝酸態窒素存在量をプロットしたところ、有意な正の相関を得た(図2)。対象期間を5年間まで延長しても、直線の傾きは小さくなるが、同様に有意な正の相関を示す(図3)。これらのことと合わせ、硝酸態窒素の垂直分布が、表層から下層(5m)までほぼ一様に分布していることは、作物に吸収されない窒素の多くが下層に浸透することを示している。

[成果の活用面・留意点]
1. 調査対象ほ場24地点の表層土は、全て黒ボク土であり、大部分の地点で0.5~1mの腐植層が存在する(一部の県北、県南地域を除く)。県央では腐植層の下に約2mまで褐色土壌、更に3.5mまで鹿沼軽石層が分布する。更にその下にはシルト質土壌が分布する。
2. 本情報は、下層土に埋没有機物層や滞水層などが存在しない畑地土壌を想定している。

[具体的データ]

(鈴木聡、上岡啓之、亀和田國彦)

[その他]
研究課題名:畑地深層土壌への養分浸透と脱窒能力の解明
予算区分:県単
研究期間:2006~2009年度
研究担当者:鈴木聡、上岡啓之、亀和田國彦

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