白紋羽病の発生を助長する危険性が低いナシ剪定枝チップ堆肥の腐熟の目安


[要約]
ナシ剪定枝チップは堆肥化後、堆積期間が長くなるにしたがって、その混合土壌における白紋羽病菌菌糸の伸長量は小さくなる。堆積期間が1年6か月以上、またはC/N比が20以下の剪定枝チップ堆肥は、施用により白紋羽病の発生を助長する危険性が低い。

[キーワード]ナシ剪定枝チップ堆肥、白紋羽病、堆積期間、C/N比

[担当]千葉農林総研・生産環境部・病理昆虫研究室
[代表連絡先]電話:043-291-9991
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・病害虫部会(病害)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
ナシ剪定枝は従来ほとんど焼却処分されていたが、環境保全の観点から焼却は困難となっている。このため、ナシ剪定枝をチップ化後堆肥化してほ場に還元する方法が考えられるものの、未熟な有機物の施用は白紋羽病の発生を助長するといわれている。したがって、ナシ剪定枝チップ堆肥を施用する場合には、十分腐熟したものを施用する必要があるが、腐熟の目安は明らかでない。このため、ナシ剪定枝チップ堆肥を混合した土壌における白紋羽病菌菌糸の動態及び堆肥の施用実態から、施用による白紋羽病の発生を助長する危険性が低いナシ剪定枝チップ堆肥の腐熟の目安を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 白紋羽病菌菌糸はナシ剪定枝チップを混合した黒ボク土では伸長するものの、黒ボク土のみでは伸長しない(図1)。一方、ナシ剪定枝チップ堆肥を混合した土壌では、堆積期間が長くなるにしたがって菌糸の伸長量は小さくなり、9か月目以降は伸長しなくなる。
2. ナシ生産者は、剪定枝チップをチップのみまたは家畜ふん堆肥、米ぬか等の副資材を加え、大部分屋外で堆積して堆肥化している(表1)。
3. ナシ生産者が製造したナシ剪定枝チップ堆肥において、堆積期間が6か月未満の堆肥を混合した土壌では白紋羽病菌の菌糸が伸長するが、1年6か月(18か月)以上の堆肥では菌糸は伸長しない(表1)。また、C/N比が30を超える堆肥を混合した土壌では菌糸が伸長するが、C/N比が20以下の堆肥を混合した土壌の大部分では菌糸は伸長しない。
4. 上記ナシ剪定枝チップ堆肥を製造している9生産者のうち、8生産者が堆肥をナシ園に施用しており、ナシ園に施用している8生産者のうち、3生産者は1年以上1年6ヶ月未満堆積した堆肥を、3生産者は1年6か月以上堆積した堆肥を施用している(表1)。
5. 以上のことから、堆積期間が1年6か月以上、またはC/N比が20以下の堆肥は白紋羽病の発生を助長する危険性が低い。一方、堆積期間が6か月未満、C/N比が30を越える堆肥は白紋羽病の発生を助長する危険性が高い。

[成果の活用面・留意点]
1. 堆積途中に副資材等が加えられた堆肥は腐熟が不十分な場合がある。
2. 切り返しを行わないと内部が乾燥し腐熟が進まないため、堆積期間が長くとも腐熟が不十分な場合がある。腐熟を進めるためには、年に数回切り返し及び潅水を行う。

[具体的データ]
図1 ナシ剪定枝チップ及び堆積過程の堆肥のC/N比の推移及び各混合土壌における白紋羽病菌菌糸の伸長量
表1 ナシ生産者が製造するナシ剪定枝チップ堆肥の性状及び圃場への施用法等

(牛尾進吾)

[その他]
研究課題名:ナシ剪定枝堆肥の白紋羽病に対する安全性の評価
予算区分:県単
研究期間:2007~2009年度
研究担当者:牛尾進吾(千葉農林総研)

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