牧場既存柵の外側に電気柵を1本設置するとニホンジカの侵入防止効果が高い


[要約]
牧場の家畜脱走防止柵(以下既存柵)の外側90cm、地面から45cmの高さに、視認性の高いリボンワイヤーの電気柵を1本設置すると、ニホンジカの侵入防止効果が向上する。

[キーワード]ニホンジカ、牧場、電気柵、侵入防止、リボンワイヤー

[担当]長野県農業試験場・企画経営部・農業技術課
[代表連絡先]電話:0263-52-1188
[区分]関東東海北陸農業・病害虫(鳥獣害)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
牧場においてニホンジカが大量に出没して、牧草を食害し大きな問題となっている。しかし、被害防止対策への多額の投資は経営上できない状況にある。 そこで、牧場の外周に張られた既存柵を利用して簡便かつ侵入防止効果の高い侵入防止柵を開発し、その効果を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 牧場の既存柵の外側90cm、地面から45cmの高さのところに視認性が高い幅広のリボンワイヤー(12mm)の電気柵を1本設置し、7,000V以上の電圧を維持するよう管理する(図1)。なお、試験牧場の既存柵は高さが80~120cm程度で、金網柵や3~4段の有刺鉄線柵、金網柵の上部に有刺鉄線1段を補強した柵である。
2. 侵入防止効果は、牧区内に設置した自動撮影カメラで撮影されたニホンジカの頭数で評価した。試験牧区内のカメラで撮影された1日1台あたりのニホンジカの撮影頭数は、通電開始前が13.9頭、通電中1.8頭、通電終了後9.8頭で、通電中の侵入個体の撮影頭数は通電していない期間の5分の1以下と、侵入防止効果が高い(表1)。
3. 試験牧区は通電直後から1日当たり撮影頭数が減少し、特に6月以降の5ヶ月間は、既存柵のみの隣接牧区の撮影頭数が1.5~15.4頭と高かったのに対し、試験牧区は0.2~3.1頭と低く、通電終了時まで高い侵入防止効果が持続する。
4. 開発した電気柵の電牧器を含む設置経費は、N牧場(延長2,200m)で242円/m、U牧場(同5,100m)が162円/mである(表2)。両牧場とも電牧器は同じだが、設置距離、地形による支柱数の違いなどから設置経費に差が生じる。

[成果の活用面・留意点]
1. 高電圧を維持するよう草木による漏電防止や既存柵等が電気柵に触れないよう定期的に点検・管理を行う。
2. 電気柵の柵線には、ニホンジカに対し視認性が高いリボンワイヤーを用いる。
3. 一部分の設置では十分な効果が期待できないため、牧場全体、または牧区全体の周囲を囲う。
4. 侵入防止効果は100%ではなく、既存柵の低い場所、助走をつけて飛べる場所などを飛び越えたりして侵入するため、既存柵を高くするなど侵入路となる場所の改善、強化を行う。
5. 電気柵設置には、既存柵の外側2m程度の除草と刈り払いが必要となるが、肩掛け式の刈払機やチェーンソーを用いると省力化でき、牧場管理者等がこの電気柵を自力施工できる。

[具体的データ]
図1 電気柵の設置図 表1 自動撮影カメラ1日1台当たりの撮影頭数(2010 N牧場)
図2 自動撮影カメラ1日1台当たり撮影頭数推移(2010 N牧場)
表2 電気柵設置に使用した資材および費用

(長野農試)

[その他]
研究課題名:新規課題対応技術・実証
予算区分:県単  
研究期間:2009~2010年度
研究担当者:菅澤勉・櫻井多美子(長野農試)、大池英樹(長野県農業技術課)、後藤光章(長野県クマ対策員)

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