CSNVによるアスターおよびトルコギキョウの新病害「茎えそ病」


[要約]
2009年に富山県内のアスターおよびトルコギキョウに発生したえそ症状はChrysanthemum stem necrosis virus (CSNV)に起因する。本ウイルスの宿主範囲は広く、ミカンキイロアザミウマによって媒介される。

[キーワード]CSNV、アスター、トルコギキョウ、茎えそ病

[担当]富山農総セ・園研・花き課
[代表連絡先]電話:0763-32-2259
[区分]関東東海北陸農業・北陸・生産環境
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
2009年5月に富山県内の園芸施設において、キクおよびトマトにトスポウイルスの1種Chrysanthemum stem necrosis virus (CSNV)による茎えそ病が発生した。発病株の除去および媒介虫の防除などの総合的な対策を講じたが、9月には同施設のアスターおよびトルコギキョウで本ウイルスに起因すると考えられるえそ性の病害が拡大し大きな問題となった。CSNVによるトマトやキク以外の被害の報告は海外も含めて無いことから、病原ウイルス粒子の観察、昆虫伝搬性および宿主範囲の調査を行い、新興トスポウイルス病の防除対策に資する。

[成果の内容・特徴]
1. アスターおよびトルコギキョウにおける病徴は、茎や葉の退緑、えそ、えそ輪紋である(図1a-c)。
2. 両罹病株からは径約100nmのトスポウイルス様の粒子が観察される(図2)。
3. 両罹病株からそれぞれ分離したウイルス株(アスター分離株、トルコギキョウ分離株)を汁液接種あるいはミカンキイロアザミウマを介して接種することにより原病徴が再現され(図3a-c)、同ウイルスが再分離される。
4. 両分離株のNタンパク質遺伝子の塩基配列(940 bp、DDBJ Accession no. AB597291)は100%一致し、既報のCSNVブラジル株(AF067068)および広島株(AB438998)とは99%および98%の相同性である(データ略)。
5. 両分離株はいずれも汁液接種により8科25種の植物に感染し、ホウレンソウ、ピーマン、トマト、シネラリアなどにえそなどの激しい全身病徴を呈する(表1)。
6. 以上から、アスターおよびトルコギキョウに発生したえそ性の病害はCSNVに起因する。病名をアスター茎えそ病(Stem necrosis)およびトルコギキョウ茎えそ病(Stem necrosis)とする。

[成果の活用面・留意点]
1. 本情報は、新興トスポウイルス病の蔓延を防ぐための情報として活用される(平成21年富山県病害虫発生予察特殊報)。
2. 本病はRT-PCR法(松浦ら、2007)やDIBA法(DSMZ社抗体使用)で診断できる。
3. キク等の購入苗は健全なものを導入し、キク親株と同じ施設で野菜・花苗を栽培しない。また、本ウイルスとミカンキイロアザミウマの宿主範囲は広いことから、施設およびその周辺の衛生管理を徹底する。

[具体的データ]
図1 アスターおよびトルコギキョウに発生した茎えそ症状 図2 アスターから分離されたウイルス粒子の電子顕微鏡写真
図3 アスターおよびトルコギキョウ分離株の原宿主での病徴再現
表1 アスターおよびトルコギキョウ分離株の宿主範囲

(桃井千巳)

[その他]
研究課題名:病害虫発生予察等事業
予算区分  :国補
研究期間 :2009~2010年度
研究担当者:桃井千巳、森脇丈治、守川俊幸(富山農総セ・農研)
発表論文等:Momonoi K. et al. (2011) J. Gen Plant Pathol. DOI: 10.1007/s10327-011-0299-9

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