初産分娩月齢の早期化と高泌乳達成のための乳用牛育成条件


[要約]
初回授精時期までの日増体量(DG)を高めて21~22カ月齢で初産分娩をさせても、体格が充分であれば安全な分娩は可能である。しかしながら、1,000gを上回るDGは乳生産を低下させる可能性がある。

[キーワード]乳用牛、育成管理、初産分娩月齢、高増体

[担当]千葉畜総研・生産技術部・乳牛研究室
[連絡先]電話043-445-4511
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 酪農経営の効率化・低コスト化を図る上で、乳生産(初産分娩)が可能となるまでに2年以上を要することは、飼料費・労働費等の直接的な経費に加え、施設の利用効率の点でも大きな課題となっており、後継牛の育成期間の短縮が望まれている。
 そこで本研究では、21〜22か月齢での安全・確実な早期分娩技術の確立を目的として、乳牛の発育が最も盛んである離乳後から初産分娩のための授精時期までを対象に、増体速度および飼料中の粗蛋白質(以下CP)含量の違いが育成時の発育及び分娩後の生産性に及ぼす影響について検討した。

[成果の内容・特徴]
 乳用種雌子牛40頭を設定した日増体量(以下DG)及び給与飼料中のCP含量に基づいて3試験区に振り分け、生後90日齢から体重が350kgを超えるまでの期間のDGを高めて、初産分娩月齢を早期化した場合の発育、繁殖、分娩および乳生産に及ぼす影響について検討した。試験区分は目標DGを750g、CPを14%程度とするLL区、DGを1,000g、CPを14%程度とするHL区、DGを1,000g、CPを16%程度とするHH区の3区とした。なお、試験終了後は各県の慣行法で管理した。
1. 発育状況
 表1に示すように、体重が350kgに達した日数は増体率を高めたHL,HH区が約40日早(P<0.01)かった。この時の体格には3試験区間で差は無く、DGが1,000gを超えても発育に影響は無かった。CP水準については、CP水準の違いによる発育への影響がなく、また、HH区のBUN値(図1)が16mg/dl以上と高く(P<0.05)推移したことから、14%程度で充分と考えられた。
2. 初回発情および受胎状況
 表2に繁殖成績を示した。初回発情は日齢297〜323日、体重330kg程度で観察され、7日後の血液中のプロジェステロン値(以下P値)が上昇していて充分な黄体形成が認められた(表2)。 受胎時の日齢は359〜417日で、体重は384〜413kgであった(表2)。受胎に要した種付け回数は3試験区とも2回で、高増体による繁殖への影響は認められなかった。(表2)
3. 分娩時状況および泌乳成績
 表3に初産分娩時の状況と泌乳成績を示した。分娩月齢は21.2〜23.0か月となり、分娩後体重は544〜565kgであった。分娩はほとんどが軽度の助産を要する程度で、高増体による分娩への影響は認められなかった。しかしながら、分娩後15週間の平均日乳量はHLとHH区がLL区に比べて低く(P<0.05)なったことから、1,000gを大幅に超えるDGは必乳量を低下させる可能性があると考えられた。

[成果の活用面・留意点]
1. 本試験の技術により、繁殖成績や分娩に影響することなく初産分娩月齢を早期化できる。
2. 現在の日本飼養標準には示されていない高い増体率に対応する飼養管理の基礎的データとして利用できる。
3. 初産時の乳量低下については、さらに適正なDGの設定や飼養方法を検討する必要がある。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:高能力乳用牛の初産分娩月齢早期化技術の開発
予算区分:国補(先端技術等地域実用化研究促進事業)
研究期間:2001〜2004年度
研究担当者:川嶋賢二、鎌田望、細井通昭、井上 貢、上田博美1、織部治夫2、石井貴茂3、秋山 清4、久末修司4、荒木尚登4、原田英雄5、中山 博文5、浅田尚登5、
所属機関:1富山畜試、2石川畜総セ、3茨城畜セ、4神奈川畜研、5愛知農総試

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