早期多収で効率的な収穫作業が可能なウメの低樹高仕立て法


[要約]
樹高を3m程度に抑えたウメ「南高」の一文字、X字低樹高仕立て法は主産地の平均収量1,600kg/10aを樹齢6年で超えることができ早期多収であり、収穫作業能率も慣行仕立て樹より高く、せん定にも一部脚立を利用する程度で安全な管理作業が可能である。

[キーワード]ウメ、仕立て法、低樹高、早期多収

[担当]神奈川農総研・生産技術部
[連絡先]電話 0463-58-0333
[区分]関東東海北陸農業・果樹
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 ウメ産地では農業者の高齢化が進み、女性農業者や雇用労力が重要になっている。ウメ栽培は収穫作業が全管理作業の50%以上を占め、傾斜地、高所での作業も多く、低樹高化することにより、収穫作業の省力化と安全性が向上するものと考えられる。そこで、樹高3m、小型の脚立を利用する程度で収穫可能な低樹高仕立て法を考案し、収量および作業性について検討する。

[成果の内容・特徴]
1. 低樹高仕立ては、4×4mに定植後、主幹から発生した新梢を斜め誘引して3年間養成し、高さ60cm程度の水平に張った架線を利用して、3年枝部分を水平誘引し、毎年誘引を繰り返し水平主枝を確立する。また、主枝から発生する中庸の徒長枝(長さ1m前後、基部径1〜1.5cm)を50cm程度の間隔で配置し、側枝として養成しながら短果枝を中心に結実させる(図1)。
2. 10a換算収量は、6年生でX字形が2.1t、一文字形も1.6tを超え、結実始めから3年で主産地の平均収量1,600kg/10aを超え、早期多収性である(図2)。ただし、2001年については晩霜害により収量が大きく低下している。
3. 収穫作業能率(1時間当たりに収穫できるウメの量)は、同樹齢の対照2本主枝仕立ての樹高が低樹高仕立てと変わらないため、差が認められない。現地試験樹(3本主枝開心仕立て、樹高約4.5m、品種「南高」)と低樹高仕立て樹(樹高約3.0m、品種「南高」)の比較では、時間当たり20〜30kg多く収穫できる(図3)。
4. 低樹高仕立ての骨格枝は早期に完成することから、未成木の同樹齢2本主枝仕立てより、夏の側枝更新を中心としたせん定量が多くなる。冬のせん定量は変わらないが、調査年の一文字形で側枝の見直しを実施したためやや多くなっている(表1)。
5. 10a換算のせん定時間は変わらないが、冬せん定時の脚立(3段:90cm)の利用は、2本主枝がせん定時間の割合で44%利用するのに対し、低樹高仕立ての一文字形は全く利用せず、X字形でも27%の利用と少なくなる(表1)。

[成果の活用面・留意点]
1. 一文字仕立ては、脚立を利用せず側枝を引き寄せてせん定や収穫が可能となるため、樹冠内部の作業があるX字仕立てより、さらに省力的である。
2. 低樹高仕立ては樹幹内部に新梢が繁茂することから、通常よりも早く収穫後の7月中に4〜5年生の側枝更新を中心に夏季せん定を実施する。
3. 主産地の平均収量1,600kg/10aについては、農林水産省「野菜・果樹品目統計」1998〜2001年、和歌山県ウメ10a当たり収量の平均値による。
4. 低樹高化に必要な資材は、10a当たり足場パイプ約320m、半硬線約1750mである。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:新栽培技術による低コスト・省力栽培技術の開発
      (1)果樹の低樹高栽培の確立
予算区分:県単
研究期間:1999〜2004年度
研究者担当名:柴田健一郎、川嶋幸喜、大井貴博、北尾一郎
発表論文等: 1)柴田ら(2004) 農作業研究39 別1:113-114.

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