稲発酵粗飼料と飼料用モミを活用した肉用牛生産


[要約]
肉用牛生産体系において、肉用牛繁殖経営では稲発酵粗飼料(イネWCS)を導入し、肉用牛肥育経営では飼料用モミを活用して肉用牛を慣行と同等に生産できる。

[キーワード]稲発酵粗飼料、飼料用モミ、肉用牛

[担当]岐阜畜研・飛騨牛研究部
[連絡先]電話0577-68-2226
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・総合研究、畜産草地(大家畜)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 岐阜県の飛騨地域では、肉用牛の繁殖経営および肥育経営が盛んに行われ、蔬菜とならび地域農業の中心的な役割を担っている。その飼養体系は繁殖農家は一部ないし大部分の粗飼料を輸入乾草に、肥育農家は濃厚飼料を輸入穀類に依存しているのが現状である。従って、肉用牛繁殖経営の多い地域での飼料イネ栽培の普及を図り、飼料用モミを肉用牛肥育体系に導入することで輸入穀類への依存率が非常に高い肉用牛肥育体系において国産飼料の給与比率の向上が期待される。
 そこで、肉用牛繁殖経営において稲発酵粗飼料(以下、イネWCSという)給与が肉用牛の繁殖性に及ぼす影響を明らかにし、現行のトウモロコシを飼料用モミで代替給与した肉用牛肥育体系の導入段階として、肉用牛肥育後期牛への飼料用モミ給与の影響を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 肉用牛繁殖農家においてイネWCSの活用として、繁殖牛へイネWCSをスーダン乾草の1/2量程度を分娩前後の4カ月間置き換え給与すると、繁殖牛はイネWCSを完食し、分娩後の種付回数および要受胎日数には影響はなく、また子牛の発育も良好であることから、肉用牛繁殖体系へのイネWCSの導入は可能であり、国産飼料の利用率が高まる(表12)。
2. 肉用牛肥育農家において飼料用モミの活用として、粉砕モミを黒毛和種去勢肥育牛の肥育後期の3カ月間に1日1頭当たり0.5kg(濃厚飼料中5%以上に相当)を慣行飼料に増飼することで、飼料摂取量の低下や下痢などの健康不良は確認されない。また枝肉成績では、枝肉重量、ロース芯面積、ばら厚、皮下脂肪脂肪厚、歩留基準値、BMSNo.およびBCSNo.とも慣行区と差がないことから、飼料用モミを肉用牛肥育体系に導入することが十分可能である(表13)。

[成果の活用面・留意点]
1. 肉用牛繁殖経営ではイネWCSの利用が可能である。また、本情報の農家実証試験により、飼料用モミを肉用牛肥育体系に導入することで輸入穀類への依存率が非常に高い肉用牛肥育体系においても国産飼料の給与比率の向上が期待される。さらに肥育牛への飼料用モミの給与量については、岐阜県畜産研究所の肥育実験によれば、濃厚飼料中の30%を肥育全期間に給与して高品質な牛肉生産が可能である。
2. イネWCSの黒毛和種繁殖牛への通年給与について検討する必要がある。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:飼料イネに対応した省力的生産・調製・利用技術の確立
予算区分:国補(地域基幹農業技術体系化促進研究)
研究期間:2001〜2003年度
研究担当者:丸山 新、臼井秀義、浅野智宏、小川正幸、澤田幹夫

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