施設内作業に適した細霧冷房の噴霧制御法


[要約]
園芸施設内における細霧冷房の要否を判断する指標として気温と自然湿球温度の差を利用すれば、気象環境や施設の換気条件が変化しても過剰噴霧が起こらず、作業に適した自動噴霧が可能である。

[キーワード]施設栽培、細霧冷房、噴霧制御

[担当]野菜茶研・果菜研究部・栽培システム研究室
[連絡先]電話0569-72-1490
[区分]野菜茶業・野菜栽培生理、関東東海北陸農業・関東東海・総合研究、共通基盤・総合研究
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 細霧冷房の噴霧方法で最も普及しているのは、噴霧時間と休止時間の設定とサーモスタットを合わせたタイマー制御方式である。しかし、この方法は天候の変化や施設の換気窓の開閉などの環境変化に対して、過剰に噴霧するおそれがある。一方、大型施設の普及に伴って雇用労働力が増加していることから、作業者が昼間に栽培ハウス内で作業を行う機会も増えている。そこで、環境変化に対して過剰噴霧を起こさず、施設内に作業者がいる場合に適した噴霧方法を開発する。

[成果の内容・特徴]
1. 本制御法の特徴として、過剰噴霧を回避して噴霧間隔を自動調節するための指標として、気温と自然湿球温度(湿球センサを日射や自然気流に露出させて測定したもの)との差を利用する。
2. 気温と自然湿球温度の温度差が噴霧判定値以上になれば噴霧条件成立とし、噴霧条件成立時には、最長連続噴霧時間/最短休止時間でON/OFFを繰り返すこととする(図1)。
3. 従来のタイマー式制御では設定値を変更せずに長時間運転すると過剰な噴霧が起こる場合があるが(図2)、本方法では天候や窓開度などの環境条件が変化しても、それに応じて休止間隔が自動的に調整される(図3)。
4. 作業者の濡れが特に不快となる、高温多湿で気流が弱く日射が強い条件では、自然湿球温度は湿球温度より高くなることから、本制御法では噴霧休止間隔が長くなるように動作する。
5. 本手法は高温多湿・気流停滞・強日射時において、ハウス内の物体への過剰な濡れを抑制できるので、施設内に作業者がいる場合の噴霧制御法として適している。

[成果の活用面・留意点]
1. 本制御方法を行うには、気温と自然湿球温度の差に基づいて噴霧出力をON/OFFする機能をもつコントローラが必要である。
2. 自然湿球温度センサは市販されていないので自作する必要があるが、温度センサを湿ったガーゼ等で常時湿らせるだけである。自然湿球温度センサはJIS Z8504「労働環境の暑熱環境の評価」に規定されているものに準じて製作できる。
3. 自然湿球温度センサに水の補給を忘れる、あるいはセンサのガーゼが汚れるなどの理由により湿球部に水が十分に回らない状態になっても、噴霧しない条件として判定されるので、自然湿球温度センサの不具合による過剰噴霧の心配はない。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:細霧冷房等の環境制御による快適化技術の開発
課題ID:11-02-02-01-07-04
予算区分:東海地域施設野菜、交付金
研究期間:2001〜(2003)〜2004年度
研究担当者:高市益行、細野達夫、渡辺慎一、川嶋浩樹、中野有加
発表論文等
1)特許出願:細霧冷房装置における細霧噴霧の制御方法と制御装置、特願2004-345323

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