二酸化炭素発生量から推定した堆肥原料の分解速度と有機物組成の関係


[要約]
牛ふんなどの有機物の堆肥化における分解速度は、分解時の二酸化炭素発生量から推定が可能で、分解速度は易分解性有機物含量と高い相関関係にある。一方、従来から堆肥化の指標として用いられるCN比は分解速度との相関が低い。

[キーワード]家畜ふん尿、有機性廃棄物、易分解性有機物、CN比

[担当]静岡畜試・ゼロエミッション堆肥プロジェクトスタッフ
[代表連絡先]電話0544-52-0146
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(畜産環境)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 有機物資源のリサイクル機運が高まっており、牛ふんをはじめとして様々な有機性廃棄物を混合して堆肥化する事例が増えているが、堆肥原料となる有機性廃棄物の分解性を表す適当な指標はない。このため、牛ふんに副資材として加える有機性廃棄物の種類が変化した場合、原料段階において堆肥化への影響を推定することは困難である。
 そこで、有機性廃棄物の堆肥化初期における分解速度を、発生する二酸化炭素発生量を測定し、有機性廃棄物の組成と比較することで、有機性廃棄物の分解速度を表す指標を明らかにし、堆肥化過程を推定することが可能となる。

[成果の内容・特徴]
1. 十分腐熟した乾物20g相当の牛ふん堆肥に、有機物組成、CN比及び総発熱量の異なる13種類の有機物を乾物2g相当添加し、水分68%、pH7.8に調整し、30℃で好気的に培養した際の二酸化炭素発生量を経時的に測定すると、有機物の種類により二酸化炭素発生量に差が見られる(図1)。
2. 培養開始後36時間に発生する二酸化炭素発生量と有機物中のエーテル可溶+熱水可溶+塩酸可溶性画分で表される易分解性有機物量との相関が最も高く、保有熱量やCN比との相関は低い(表1)。
3. 堆肥原料の比熱を2.9J/g、熱損失を40%と仮定すれば、堆肥原料の分解に伴う発熱により、堆積後36時間以内に品温が20℃から70℃程度まで上昇するのに必要な熱量は約250J/gと推定されるが、この場合に必要な堆肥原料中の易分解性有機物の割合は約30%である(図2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 牛ふん堆肥に混合する副資材の有機物組成を測定することによって、堆積初期の発熱に寄与するか否を判断でき、堆肥化過程の品温推移を推定することが可能である。
2. 易分解性有機物量(エーテル可溶+熱水可溶+塩酸可溶性画分)は、酸性デタージェント(AD)可溶性有機物量と相関が高く、分析値を代用することが可能である。
3. 有機物の分解速度は、堆肥原料の水分、仮比重及び通気量等によって異なるため、品温の上昇には易分解性有機物量の確保とともに、好気的な発酵の条件を整えることが必要である。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:有機性廃棄物ゼロエミッションを目指した堆肥生産利用方式の確立
予算区分:県単
研究期間:2003〜2005年度
研究担当者:佐藤克昭、片山信也、望月建治、芹澤駿治

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