堆肥連用畑におけるキャベツの堆肥窒素利用率と施肥窒素の削減


[要約]
堆肥を20年以上連用した畑におけるキャベツ栽培での堆肥窒素のみかけ上の利用率は稲わら堆肥で10〜15%、豚ぷん堆肥で5〜10%、バーク堆肥では土壌の種類や年次により変動する。堆肥の連用により20〜30%の窒素化学肥料削減が可能となるが、豚ぷん堆肥では施用量を含めた総窒素投入量の削減が必要である。

[キーワード]黄色土、黒ボク土、堆肥、連用、キャベツ、施肥削減、窒素利用率

[担当]静岡農試・土壌肥料部
[連絡先]電話0538-36-1556
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・土壌肥料
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 3種類の堆肥(現物当たり:稲わら堆肥2tおよび5t、豚ぷん堆肥5t、バーク堆肥5t/10a)を20年以上連用した黒ボク土、黄色土においてキャベツを栽培した時の窒素化学肥料の削減量および堆肥連用畑における堆肥窒素の肥効率を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 3種類の堆肥の成分(4年間の平均)を表1に示した。
2. キャベツ栽培において黒ボク土の稲わら堆肥の連用を除くと化学肥料単用と比べ、いずれの土壌、堆肥においても20〜30%程度窒素化学肥料を削減しても収量は低下しない(表2)。
3. 窒素化学肥料を施用せず、堆肥窒素のみでキャベツ栽培を行った結果、堆肥由来の見かけ上の窒素利用率は稲わら堆肥では10〜15%、豚ぷん堆肥で5〜10%で土壌の違いによる差は小さい。バーク堆肥は黄色土で低く、また年次による変動も大きい。一方、窒素化学肥料の利用率は土壌の種類に関係なくおよそ35%である(表3)。
4. 豚ぷん堆肥5tの連用では黒ボク土、黄色土両土壌とも堆肥施用のみでも化学肥料単用とほぼ同等のキャベツ収量が得られるが、豚ぷん堆肥の窒素利用率が低く、環境への負荷は大きい(表3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 堆肥を連用した土壌における施肥窒素削減のための基礎資料とする。
2. 試験ほ場における堆肥施用は年1回(キャベツ作付前)で1981年から施用開始、当該試験の研究期間は連用21年〜24年目にあたる。
3. 連用1〜20年は化学肥料に堆肥を上乗せして施用した後、キャベツ作において堆肥施用区では2001年度に窒素化学肥料を20〜30%削減、2002〜2004年度は窒素化学肥料を無施用とした。
4. 夏作は2001年コマツナ及びチンゲンサイ、2002、2003年は作付なし、2004年カンショを作付けた。
5. 供試土壌は細粒黄色土、厚層腐植質黒ボク土(2次案)で、3次案ではそれぞれ細粒台地黄色土、細粒質腐植質黄色土である。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:畑土壌における窒素制御技術の確立
予算区分:国補
研究期間:2001〜2004年度
研究担当者:神谷径明、若澤秀幸、江本勇治、松本昌直、小杉徹、中村仁美、高橋和彦

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