玄米外観品質に関するQTLの検出とマッピング


[要約]
コシヒカリ(日本型)とKasalath(インド型)の組み合わせから、背白、基白粒比率に関与するQTLを5箇所見出した。これらは、第2、第5、第6、第8、第10染色体に座乗する。さらに、連鎖地図上にマッピングした結果、第5染色体には2つのQTLが存在する。

[キーワード]イネ、玄米外観品質、背白粒、基白粒、QTL、マッピング、選抜指標

[担当]富山農技セ・農業試験場・作物課
[連絡先]電話076-429-2114
[区分]関東東海北陸農業・北陸・水田畑作物
[分類]科学・普及

[背景・ねらい]
 玄米外観品質は、収量、食味と並び育種の重要な選抜指標の一つである。しかしながら、その遺伝様式については、関与する遺伝子が多く、また、出穂期や倒伏程度など他の形質が大きく影響するためほとんど解析が進んでいない。一方、温暖化の影響と推測される玄米外観品質の低下は早急な対策が求められる問題の一つである。そこで、ほぼ均質化したコシヒカリの遺伝的背景をもつインド型品種Kasalathの染色体断片置換系統群(CSSLs: Chromosome Segment Substitution Lines)を用いることにより、背白、基白粒比率に関わる QTL(Quantitative trait locus)の検出を試みた。さらに、検出したQTLを染色体上に位置付けることにより、DNAマーカー育種における選抜指標を得ることを目的とした。

[成果の内容・特徴]
1. 供試したCSSLs34系統のうち出穂期がコシヒカリと同時期(±5日)であった27系統の中で、SL-205、SL-212、SL-216、SL-225、SL-231の背白、基白粒の発生がコシヒカリより多いことから、Kasalathの対立遺伝子がコシヒカリに対して背白、基白粒比率を増加させるQTLが第2、第5、第6、第8および第10染色体にそれぞれ1箇所以上存在する(図1)。
2. SL-212のKasalath型染色体置換領域がヘテロである個体由来のF4組み換え固定系統群の解析から、第5染色体にはQTLが2箇所存在することを明らかにし、それぞれをqAPG5-1(QTL controlling appearance grain quality on chromosome 5-1)、qAPG5-2と命名した(図2)。
3. qAPG5-1は、C10987(STSマーカー)とRM6645(SSRマーカー)の間に、qAPG5-2はE10886(STSマーカー)とRM3476(SSRマーカー)の間にそれぞれ存在する(図2)。なお、STSマーカーおよびSSRマーカーのプライマー情報は、 http://rgp.dna.affrc.go.jp/publicdata/caps/index.htmlおよびMcCouch et al.(2002)(注)から得ることが出来る。
(注)Development and Mapping of 2240 New SSR Markers for Rice (Oryza sativa L.) DNA Res 2002 9: 199-207

[成果の活用面・留意点]
1. qAPG5-1、qAPG5-2のマッピング情報は、それらの近傍マーカーを選抜指標として育種事業で活用できる。特に、これまで玄米外観品質が不良であることにより活用し難かったインド型品種の利用に有効である。
2. qAPG5-1、qAPG5-2の解析で作成したF4組み換え固定系統群は、登熟性に関する研究のための実験材料として活用できる。また、一部の系統(例えば、BW-50やBW-77)は遺伝子単離に向けた交配母本として有用である。
3. 第2、第8、第6、第10染色体のQTL情報については、qAPG5-1、qAPG5-2と同様の研究に向けての基礎データとなる。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:「温暖化対応技術」プロジェクト
予算区分:県単
研究期間:2003〜2007年度
研究担当者:蛯谷武志、表野元保

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