消費者が好むトンカツ用豚ローススライス肉の外観


[要約]
消費者が好むトンカツなどに用いられる豚ロース肉の外観は、背脂の厚さが5mm程度の適度な脂肪があるもので赤肉の色が淡泊過ぎないものである。このうち豚肉を食べる機会が多い消費者は適度な脂肪の量を重視し、機会が少ない消費者は淡泊すぎない赤肉の色を重視する。

[キーワード]豚肉、ローススライス肉、外観、コンジョイント分析

[担当]三重科技セ・農業研究部・経営植物工学研究課
[代表連絡先]電話:0598-42-6356
[区分]関東東海北陸農業・経営
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
  近年、豚肉においては銘柄豚としての販売を行う産地や養豚農家が自家農場産の肉を直売する経営が増えており、豚肉に関する消費者ニーズの把握は重要となってきている。そこで、消費行動において重要な判断基準となる肉の外観に焦点をあて、主にトンカツや豚ソテーとして用いられる厚切り豚ローススライス肉をモデルとして、外観特性の組み合わせによって消費者価値が高くなる製品モデルをコンジョイント分析により明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 外観要因として設定する属性は、購買行動に影響があると考える要因として赤肉の色と背脂の厚さ、霜降り(サシ)の有無とする。価格を含めた4つの属性において、各2〜3の水準を組み合わせた複数の仮想商品を作成し(図1)、この購入希望順位を調査・解析する(表1)。
2. 全回答の平均値で最も重視された属性は背脂の厚さ(37.4)で、次いで赤肉の色(31.8)となり、価格(13.7)より肉色や背脂の量といった外観が重視されている。霜降りの相対重要度は17.2と高くない。
3. 各水準の部分効用値からは、赤肉の色は中間色(0.51)が最も好まれるが、淡色(-0.70)は嫌われる。脂肪の厚さは5mm(0.80)が好まれ、1cm(-0.78)の厚脂になると嫌われる。霜降りについては有無の効用差はほとんど無い(表2)。
4. 回答者を豚肉を食べる頻度別に分類すると、食肉回数が多いほど背脂の厚さと価格を重視する傾向にあり、逆に食肉回数が少ないほど赤肉の色と霜降りの有無を重視する傾向にある(表2)。
5. 消費者価値の高い外観の具体的な製品モデルは、背脂の厚さが5mmで赤肉の色がポークカラースタンダードの④または⑥に該当する中間から濃色系のものである。逆に消費者価値が最も低い製品モデルは、背脂が1cmの厚脂でポークカラースタンダード②の淡色系のものである。この場合、1cmの背脂厚を5mmに調整することで、全効用値は3.61から5.19に向上し、中間色で1cmの背脂厚または濃色で背脂無しの製品と同程度の価値になる(表3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 本情報は銘柄豚として販売強化を行う産地や自家農場産の肉を直売する生産者などが消費者志向の豚肉生産を行う場合に活用できる。
2. 本調査結果は、養豚業との交流会に参加した豚肉消費に関心の高い消費者を対象としており、消費者全体の嗜好を表すものではない。しかし、マーケティングの視点では関心の高い消費者への調査は消費動向を捉えるものとして重要となる。


[具体的データ]

 
表1 外観調査に設定した属性と水準
図1 コンジョイントカードの例
表2 コンジョイント分析の結果
表3  赤肉の色と背脂の厚さによる全効用値の比較

[その他]
研究課題名:消費者のための豚肉等製品モデルと情報提供モデルの開発
予算区分:県単
研究期間:2004〜2006年度
研究担当者:糀谷  斉、水谷  憲、大泉賢吾

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