乳酸菌散布装置の自動化による飼料イネ収穫作業時の溶液消費量の節減


[要約]
飼料イネ専用収穫機に搭載し刈り取りと同時に対象作物に乳酸菌溶液を添加する乳酸菌散布装置は、噴霧量の適正化及び作物体検出センサを含む簡易な自動化回路により、不要な噴霧を抑制できる。自動化による溶液消費量の節減効果は35%程度である。

[キーワード]飼料イネ、専用収穫機、乳酸菌、散布装置、自動化、畜草1号

[担当]中央農研・北陸大規模水田作研究チーム
[代表連絡先]電話:025-523-4131
[区分]共通基盤・作業技術、総合研究(飼料イネ)、 関東東海北陸農業・作業技術
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
  飼料イネのロールベールサイレージ調製において、高い発酵品質と長期安定性を得るためには、収穫・調製過程で乳酸菌溶液を添加することが有効である。また、近年では軟弱な湿田でもダイレクト収穫が可能なクローラ型の専用収穫機も普及し、これらに対応する乳酸菌散布装置も入手可能である。しかし実際の生産場面では、頻繁なスイッチの断続を行わず、溶液を無駄に消費してしまうことが多い。そこで、資材コストを低減するために、移動・旋回時やロールベール排出時等に自動的に噴霧を抑制できるよう乳酸菌散布装置を改良し、現地営農圃場においてその実用性を検討する。

[成果の内容・特徴]
1. 対象とする収穫機は、フレール型の刈り取り機構を持つ専用収穫機(飼料コンバインベーラ、YWH-1400A)である。自動化した乳酸菌散布装置は、刈り取り・成形作業を行う際に、機体前方に溶液を噴霧して材料草に添加するものである。
2. 散布装置に求められる適正な噴霧量は、実際の収量や収穫機の走行速度によって変動する。生産現場での実際値を考慮すると、稲発酵粗飼料専用乳酸菌「畜草1号」の場合、要求される噴霧能力は0.1〜0.6 L/min程度となる(図1)。
3. 改良した散布装置は、作物体検出センサを含む自動化回路、電源装置、タンク一体型定容量ポンプ及び噴霧ノズル(最大吐出量0.6L/min×1)等で構成される。作物体検出センサは振り子状の横バーと押しボタンスイッチを刈り取り部前方に設置したもので、刈り取り作業中は作物体がこのバーを後方に押してスイッチが入る構造である(図2)。
4. 自動化回路はこの作物体検出センサに加えて、収穫機の刈り取りクラッチレバー部と主変速レバー部にそれぞれ設置したマイクロスイッチと、これらに接続されたリレーで構成される(図3)。自動化回路では、3つのセンサが全てONの時のみに噴霧ポンプを駆動するほか、作物体検出センサ以外のセンサを省略して使用することも出来る。
5. 実際の収穫調製作業において本装置を用いると、オペレータが頻繁なスイッチ操作をすることなく自動的に噴霧が断続され、無駄な溶液噴霧を容易に抑制できる。溶液消費量は対照機と比較して、作物体検出センサのみの使用で20%程度、他の2つのセンサも加えた自動化回路では35%程度の節減が可能である(表1)。

[成果の活用面・留意点]
1. 飼料イネの収穫・調製作業において、刈り取りと同時に乳酸菌溶液等を添加する場合に、溶液の噴霧を自動的に断続する装置として有効である。
2. 乳酸菌溶液の節減効果は、実際の圃場の形状や刈り取り経路によって変動する。


[具体的データ]

図1 収量・走行速度に応じた噴霧量
図2 作物体検出センサと噴霧ノズル
表1 自動化による溶液消費量の節減効果
図3 自動化した乳酸菌散布装置の構成図

[その他]
研究課題名:北陸地域における大規模水田作の高精度管理技術と高品質飼料イネ生産技術の開発
課題ID:212-b
予算区分:北陸大麦飼料用稲輪作
研究期間:2004〜2006年度
研究担当者:元林浩太、湯川智行、小島誠、米村健

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