パーコール液を用いた簡易な核移植レシピエント卵子の選別法


[要約]
パーコール液への沈降の違いにより、ウシ卵丘細胞−卵子複合体を短時間で簡単に選別できる。また、核移植に用いる成熟卵子も同様の手法で選別が可能であり、核移植には比重の高い卵子を用いるのが有効である。

[キーワード]核移植、パーコール、ウシ卵子

[担当]富山畜試・酪農肉牛課
[代表連絡先]電話:076-469-5921
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]研究・普

[背景・ねらい]
  核移植による胚生産を確実におこなうには良質な卵子を確保することが必要である。従来、卵子の品質評価は顕微鏡下の観察によっておこなわれてきたが、技術者の主観や熟練度により、品質や処理時間のバラツキの起きる可能性がある。
  そこで、核移植をより効率的におこなうために、客観的に短時間で卵丘細胞−卵子複合体および成熟卵子の品質を判定、回収するためのパーコール液を用いた選別法を開発する。

[成果の内容・特徴]
1. 卵丘細胞−卵子複合体および成熟卵子は比重の違いにより、パーコール液への3分間の沈降で選別、回収することができる。
2. 形態ランクの良い卵丘細胞−卵子複合体は比重の高いものが多い(図1)。
3. 22.5%パーコール液への沈降によって、より卵丘細胞の層が厚く、細胞間の結合の緊密な卵丘細胞−卵子複合体を簡単に回収できる(図1)。
4. 形態の良い卵丘細胞−卵子複合体からは比重の高い成熟卵子をより多く得られる(表1)。
5. 15%以上のパーコール液に沈降するA,Bランクの成熟卵子をレシピエント卵子として用いた核移植卵の発生率が高い傾向にあり(表2)、比重の高い成熟卵子のみを利用することで、核移植の作業を効率化できる。

[成果の活用面・留意点]
1. 卵丘細胞−卵子複合体、成熟卵子を客観的に短時間で評価、回収でき、品質の良いレシピエント卵子を用いることで、核移植をより効率的にできる。
2. 当該技術は技術者の熟練度に関係なく利用することができる。
3. パーコールは浸透圧を調整し、ろ過滅菌したものを用い、パーコール液の調製は使用の都度、おこなう。
4. パーコール液中に10分間程度放置しても、卵子の発生率には影響しない。


[具体的データ]

図1.卵丘細胞-卵子複合体の形態ランクとパーコール液へ沈降する割合
表1.形態により分類したウシ卵丘細胞−卵子複合体および成熟卵子の比重
表2.レシピエント卵子の比重と核移植卵の発生率

[その他]
研究課題名:個体別ウシ卵子によるクローン牛生産効率化試験
予算区分:県単
研究期間:2002〜2006年度
研究担当者:四ツ島賢二、清水雅代、紺博昭
発表論文等:Yotsushima et al. (2007) Reprod. Fertil. Dev. vol.19 (1, 2):295-296.

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