ガラス化保存した牛胚のストロー内希釈操作による生存性の変化


[要約]
ガラス化保存し、20℃あるいは30℃の温水を用いて加温及びストロー内希釈した牛胚の生存性には差は認められない。しかし、ストロー内希釈後の経過時間が長くなると生存性は低下する。

[キーワード]牛胚、ガラス化保存、ストロー内希釈、生存性

[担当]神奈川畜技セ・畜産工学部
[代表連絡先]電話:046-238-4056
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
  ガラス化保存は、細胞外液に氷晶形成を伴わないことから性別判定のためにバイオプシーされた胚の超低温保存に有効である。この技術を普及するためには、高い受胎率を安定的に得ると同時に、農家の庭先で加温し直ちに受胚牛へ移植可能な手法の確立が望まれている。そこで、ガラス化保存した牛胚のストロー内希釈時の加温温度及び希釈操作が胚の生存性に及ぼす影響を検討する。

[成果の内容・特徴]
1. 胚はガラス化液(25%エチレングリコール25%DMSO及び0.4%BSA添加修正PBS)に投入し、30秒以内に0.25mlストローに充填し液体窒素中で冷却してガラス化保存する。希釈液(5%エチレングリコール0.15Mシュークロース添加修正PBS)はガラス化液を挟むようにストロー内に配置する。
2. 加温及びストロー内希釈は、液体窒素から取り出したストローを空気中で5秒間保持した後に、温水中で希釈液の氷晶を溶解させ、ストロー内溶液を混合し、さらに温水中に3分間保持して行う。
3. 加温及び希釈操作時の温水を20℃または30℃とした胚の培養48時間後の、生存率及び透明帯脱出率は、表1に示すとおり、有意な差は認められない。
4. 加温及び希釈操作を20℃温水で行ったストローを38.5℃培養器内で0分、5分、20分及び40分間保持した後にストローから取り出した胚の培養48時間後の生存率及び透明帯脱出率は、表2に示すとおり、経過時間の延長に従い低下する傾向である。
5. ストロー内希釈過程のストロー内の耐凍剤濃度は、表3に示すとおり、ストロー内希釈後3分にはストロー内の各部位でエチレングリコール(EG)が7%程度、DMSOが3%程度に希釈されている。

[成果の活用面・留意点]
1. 緩慢凍結法による凍結胚と同様に、30℃の温水で加温及び希釈操作が可能である。
2. 胚の生存率は、培養48時間後の胞胚腔の再形成を指標とする。


[具体的データ]

表1 加温及び希釈操作時の温度が胚の生存性に及ぼす影響
表2 ストロー内希釈後の経過時間が胚の生存性に及ぼす影響
表3 ストロー内希釈過程の耐凍剤濃度

[その他]
研究課題名:牛の雌雄産み分け技術の実用化試験
予算区分:県単
研究期間:2003〜2006年度
研究担当者:秋山  清、坂上信忠、仲澤慶紀

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