クライオトップでガラス化保存したウシバイオプシー胚のストロー内耐凍剤除去法


[要約]
クライオトップ(CT)を用いてガラス化保存したウシバイオプシー胚は、耐凍剤除去液を入れたストロー内にCTシート部を挿入、上下に振とうして、胚をストロー内に移行させることで、耐凍剤除去が可能である。0.3モル(M)Sucrose(Suc)を添加した20%子牛血清(CS)加199を耐凍剤除去液とした場合の受胎率は定法と同等である。

[キーワード]クライオトップ、ガラス化保存、ウシバイオプシー胚、ストロー内耐凍剤除去

[担当]静岡畜試・乳牛部
[代表連絡先]電話:0544-52-0146
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
  通常、ガラス化保存胚を利用する場合、実験室内で熟練した技術者による耐凍剤除去処理が必要で、このことが野外普及の妨げとなっている。そこで、CTを用いてガラス化保存したウシバイオプシー胚を農家の庭先で利用するためのストロー内耐凍剤除去法を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 生体から回収した胚を性判別目的で約20%の細胞を採取後、CT法で保存したものについて、耐凍剤除去液を充填したストロー(38℃に加温)にCTのシート部を挿入(図1)し、30秒、上下に振とう後、CTをストローから取り出し、更に2分30秒かけて耐凍剤除去を行う。この際、シート部を30秒間上下に振とうすることで、すべての胚がストロー内に移行する(表1)。ストロー内の耐凍剤除去により、胚の生存性は損なわれない(表1)。
2. 0.3MSucを含む20%CS加199を用いたストロー内耐凍剤除去後、30分放置後の胚の生存性は、Suc濃度が0.5Mに比べ高い傾向にある(表2)。したがって、0.3MのSucを含む除去液を用いる場合は、移植に長時間を要しても、胚に対する障害が少ない傾向にある。
3. 0.3MSucを含む20%CS加199を耐凍剤除去液に用いて、ストロー内でCTシート部を30秒の上下振とうと2分30秒の耐凍剤除去操作(図1)をした後、CT法でガラス化保存したバイオプシー胚を移植することで、定法(実験室内段階除去法)と同等の受胎率が得られる(表3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 耐凍剤除去液を入れるストローの口を広げ、CTのシート部が挿入しやすいようにするストロー加工が重要である。
2. 保管器から取り出し、ストロー内耐凍剤除去するまでの手技に迅速性が求められる。


[具体的データ]

図1 ストロー内耐凍剤除去法
表1 ストロー内耐凍剤除去法a)による胚のストロー内移行と培養b)による胚の生存性評価
表2 ストロー内耐凍剤除去液のSuc濃度・放置時間と培養a)による胚の生存性評価
表3 耐凍剤除去液のSuc濃度と移植成績

[その他]
研究課題名:性判別ガラス化保存胚の簡易移植法の検討
予算区分:県単
研究期間:2004〜2006年度
研究担当者:佐野文彦、齋藤美英、赤松裕久、永田浩章、土屋貴幸、笠井幸治

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