牛体外受精胚の日齢及びストロ−内保存は透明帯脱出率に影響する


[要約]
優良な胚盤胞に発育した時点の日齢および移植用ストロ−内での保存日数は牛体外受精胚の透明帯脱出率に影響を及ぼす。成熟前の卵子の形態の違いは、胚盤胞まで発生すればその後の透明帯脱出率に影響を及ぼさない。

[キーワード]体外受精胚、透明帯脱出、発生日齢、ストロ−内保存、成熟前の卵子の形態

[担当]三重科技セ・畜産研究部・家畜改良繁殖担当
[代表連絡先]電話:0598-42-2029
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
  体外受精胚の受胎率は、体内受精胚と比較すると低いとする報告が多い。我々は、体外受精胚の受胎に必須の条件となる透明帯脱出について「成熟培養前の卵子の形態」や「優良な体外受精胚に発育した時点の日齢」ならびに「移植用ストロ−内での保存日数」がどう影響するかを検討する。

[成果の内容・特徴]
  と体卵巣から吸引採取した卵子を形態別に3ランクに分類し、卵子ランク別に発育した体外受精胚の透明帯脱出状況を観察した。卵丘細胞が十分付着し、卵子細胞質の色調が濃い卵子をG(Good)ランク、Gランクに比べて卵子細胞質の色調がやや薄い卵子および卵丘細胞の付着の弱い卵子をF(Fair)ランク、G,Fランクよりも卵子細胞質の色調が薄く卵丘細胞の付着も弱い卵子をP(Poor)ランクとした。
  「優良な体外受精胚」とは、内細胞塊が明瞭に区別でき、栄養膜細胞が均一に内細胞塊を囲み、変性細胞がほとんど確認できない胚盤胞および拡張胚盤胞とし、媒精後7,8,9日目に優良な体外受精胚に発育した胚(7,8,9日目胚)をそれぞれ別のシャ−レに移して培養を継続し、13日目まで透明帯脱出状況を観察した。
   体外受精胚のストロ−内保存方法は、0.25mlストロ−中に発生培養液と共に優良な体外受精胚を封入し、バッテリー式保温器に収納して38.5℃で1日または2日間保存した。その後、シャ−レに戻して炭酸ガス培養器内で培養を継続しながら透明帯脱出を観察した。
  なお、成熟培養液は10%CS加M199、媒精用培地はIVF-100、発生培養液は5%CS加修正SOFを使用した。
1.成熟前の卵子の形態は、優良な体外受精胚に発生後の脱出率に影響しない(表1)。
2.7日目胚は、8,9日目胚に比べて10日目までの脱出率が高い(表2)。
3.9日目胚の透明帯脱出率は低い(表2)。
4.ストロ−内保存は、体外受精胚の生存率を低下させる(表3)。
5.ストロ−内保存は、透明帯脱出率を低下させる(表3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 体外胚の受胎率向上に寄与できる知見である。
2. 胚のストロ−内保存法に関しては、保存用培養液の検討が必要。


[具体的データ]

表1 卵子ランク別の優良体外受精胚発生成績
表2 7,8,9日目胚の透明帯脱出率成績
表3 ストロ−内保存後の生存性及び透明帯脱出率

[その他]
研究課題名:クロ−ン技術を利用した高品質雌和牛の有効生産技術開発
予算区分:県単
研究期間:2003〜2007年度
研究担当者:島田浩明、水谷将也

目次へ戻る