多収・省力的な飼料イネ・飼料用麦類の1年2毛作体系


[要約]
飼料イネと飼料用麦類を組み合わせることにより、関東北部でも水田における飼料イネ・飼料用麦類の1年2毛作体系が可能となる。最も多収で省力的な栽培体系は、飼料イネはホシアオバを直播で、飼料用麦類はエンバクのエンダックスを条播で栽培する方法である。

[キーワード]飼料用麦類、飼料イネ

[担当]栃木酪試・酪農技術部・草地飼料研究室
[代表連絡先]電話:0287-36-0768
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(草地)
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
  現在、水田機能を維持したままで飼料生産が可能となる作物として、飼料イネの作付けが増加しているが、栃木県では飼料イネ収穫後には冬作物は作付けられておらず、水田の高度利用という観点からすると冬作物の導入が必要である。そこで水田での高度利用を図るため飼料イネと飼料用麦類の組み合わせによる多収・省力的な1年2毛作体系を確立する。

[成果の内容・特徴]
1. 飼料イネを6月上旬に移植あるいは直播し、9月中旬から10月上旬に収穫する場合、飼料用麦類(ライムギ、ライコムギ、オオムギ、エンバク、イタリアンライグラス)を10月下旬から11月上旬に播種し、4月下旬から5月下旬に収穫することにより、水田における飼料イネ・飼料用麦類の1年2毛作体系が可能となる(表1)。
2. 飼料イネでは直播のホシアオバが、飼料用麦類ではエンダックスが最も多収となったが、飼料用麦類では、10月が多雨となる年(2004年)には発芽時の湿害により収量が低下するおそれがあるため、排水対策が必要である。また、飼料イネは直播することにより育苗に係るコストを削減できる。
3. エンダックスは、ライムギやイタリアンライグラスと比較して残根量が少なく、後作飼料イネの作付けにおいては、入水時以降の有機物の分解による窒素飢餓や土壌の還元化が起こりにくいと考えられる(表2)。
4. 飼料用麦類の播種方法は、散播(ミスト機を使用して播種)と比較して条播(ロータリーシーダーを使用して播種)の方が、同時に耕起、施肥、播種を行うため省力的であり、収量性の点からも優れている(表3)。
5. 以上のことから、飼料イネ・飼料用麦類の1年2毛作体系は、飼料イネはホシアオバを直播で、飼料用麦類はエンバクのエンダックスを条播する栽培体系が最も多収であり省力である(表4)。

[成果の活用面・留意点]
1. 本試験は、栃木県塩谷町で行ったため、塩谷町より南の地域で適している。県北地域で行う場合、エンバクはライムギ、オオムギと比較して寒さに弱いため、10月20日頃には播種しなくてはならない。
2. 水田で飼料用麦類を栽培するには、排水対策が必要である。
3. 乾物率が30%前後であったオオムギ、エンバクは収穫調製にダイレクトでロールにする飼料イネ専用収穫機を使用できるのではないかと考えられたが、他の飼料用麦類では、乾物率が低いためサイレージ調製するためには、予乾が必要である。


[具体的データ]

表1 飼料用麦類及び飼料イネの生育経過と収量結果
表2 播種法試験結果(2003年播種)
表3 実規模での播種法試験結果(2004年播種)
表4 多収省力化体系

[その他]
研究課題名:水田における飼料用麦類の安定栽培技術の開発
予算区分:ブランドニッポン3系
研究期間:2003〜2005年度
研究担当者:前田綾子、小野晃一、菅沼京子、田澤倫子

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