備蓄草利用による肉用繁殖牛の冬季放牧技術


[要約]
放牧草地への施肥は、年1回の場合、5月下旬より8月上旬のほうが備蓄草の乾物収量は多い傾向がみられる。備蓄草のみで11月から3月まで肉用繁殖牛を冬季放牧するためには、1頭当たり約1ha あれば、放牧期間中に体重の減少は認められない。

[キーワード]肉用繁殖牛、周年放牧、備蓄期間、ASP

[担当]茨城肉牛研・飼養技術研究室
[代表連絡先]電話:0295-52-3167
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(草地)
[分類]技術及び行政・普及

[背景・ねらい]
1. 茨城県内の肉用牛繁殖経営は、高齢化により戸数・頭数とも減少しており、繁殖和牛の増頭を図るため、飼養管理労力の低減が求められている。
2. 放牧は省力化・低コスト化に有効であるが、茨城県内の公共牧場の利用期間は、4月から10 月下旬で、これ以外の期間は牛舎内で飼養している。
3. 公共牧場放牧地の一部を冬季放牧用に備蓄することで、周年放牧が可能となる。
4. 施肥量・施肥時期・備蓄開始時期・備蓄開始期間と草量の関係について検討すると共に、備蓄した放牧草地で繁殖和牛の周年放牧を実証する。

[成果の内容・特徴]
1. 標高約120mにあるイネ科牧草・野草主体の草地における施肥時期の違いによる乾物収量は、5月施肥区より8月施肥区の方が多い傾向が見られる(表1)。
2. 備蓄開始時期の違いによる草量は、開始時期が遅いほど減少する傾向が見られる。
3. 備蓄期間と草量の関係は、備蓄期間が長いほど減少する傾向が見られる。
4. 施肥量は標準区は10a当たりN・P2O5・K2Oが9・8・8Kg、多肥区が14・12・14Kgで、5月下旬施肥区では多肥区の収量が多く、8月上旬施肥区では差はない(表2)。
5. この結果、備蓄草を用いた周年放牧を行う場合、予定の全草地に8月上旬に標準区の量で施肥を行い、冬季放牧計画に沿って当該牧区への入牧2ヶ月前から備蓄を開始するのが最も効率的である。ただし、利用が遅い牧区でも少なくとも9月中旬頃までには備蓄を開始する。
6. 備蓄草地(イネ科雑草・牧草主体)への肉用繁殖雌牛の冬季放牧は、16年度は190aに11月下旬から2頭を123日間、17年度は145aに11月下旬から3頭を84日間放牧し、前者では129CD、後者では174CDの牧養力が得られた。(表3)この間、体重の減少は見られなかった(図1)。
7. 以上の結果から、11月から3月まで備蓄草のみで冬季放牧を行うためには、おおむね1頭当たり1ha が必要である。

[成果の活用面・留意点]
1. 公共育成牧場については、管理者や放牧牛の所有者に周年放牧が可能であることを周知する。また、近年増加している遊休農地での周年放牧についても普及センターを通じて普及を図る。


[具体的データ]

表1 施肥時期別の備蓄草量の推移(kgDM/10a)
表2 施肥量別の備蓄草量(kgDM/10a)
表3 冬期放牧結果
図1 供試牛の体重の推移

[その他]
研究課題名:肉用繁殖牛の周年放牧実証試験
予算区分:県単
研究期間:2003〜2005年度
研究担当者:合原義人、茨田潔、高橋覚志、谷島直樹、堀越忠泰

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