全面有孔の暗渠管を利用した切返しをしない簡易な堆肥化技術


[要約]
管壁が網目状で通気性が高く、軽量で安価な土木用資材である全面有孔の暗渠管を、水分調整された肉牛ふんに埋設し、切返しせずに6ヶ月間維持すると、暗渠管により通気性が確保され、堆積物内部まで堆肥化が進行する。

[キーワード]家畜ふん尿、堆肥化、暗渠管、省力化

[担当]神奈川畜技セ・企画経営部
[代表連絡先]電話:046-238-4056
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(畜産環境)
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
  家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律の施行により、家畜排せつ物の資源利用と環境汚染防止が重要な課題となっている。一方、家畜排せつ物処理は畜産農家の生産性向上に直接結びつかないので、簡易で省力的、低コストな処理施設や技術に対する畜産農家の要望は強い。そこで、小規模農家を対象とした堆肥化技術として、暗渠管を利用した省力的な堆肥化技術を実証する。

[成果の内容・特徴]
1. 使用した暗渠管は、管壁が網目状に開孔した内径63mmの全面有孔管である。高密度ポリエチレン製のため軽量で取り扱いやすい(写真1左)。
2. 肉牛ふんと敷料を主体とした水分65%前後の堆肥化物約1.8t、2.6m3、を2.5m×2.5m、高さ1.2mに堆積する。その際に、暗渠管を5本、80cm間隔で地面と平行に埋設する(図1)。施工は堆肥化物を堆積する時に暗渠管を置くだけという簡易な施工で、暗渠管の価格は1本4mで約1,500円と安価で、何度も再利用が可能である。
3. 堆肥化物を通気性シートで被覆して6ヶ月間切返しせずに堆肥化する場合、堆肥化物に暗渠管を埋設することで最高温度の観測日が約1/3に早まる(表1)。また、堆肥化初期の温度上昇が良好である(図2)。
4. 堆積6ヶ月後では、暗渠管を埋設した場合、全体の重量の減少率は55.2%、水分の減少率は72.3%と暗渠管なしに比べて高い(表2)。暗渠管の埋設により、堆積物中心部の通気性が改善される。
5. 暗渠管を埋設した場合、堆積物の有機物の減少率も31.7%と暗渠管なしに比べて高い。堆積物中心部の通気性が改善されることで好気性微生物の活発な活動が生じて堆肥化が進み、有機物の分解が進んでいる(表2)。
6. 暗渠管には送風機などによる送風を行う必要はなく、水分調整した堆積物に、単に暗渠管を埋設するだけで、暗渠管開口部からは盛んに水蒸気が上がり、堆積物中心部の通気性が確保される(写真1右)。

[成果の活用面・留意点]
1. 暗渠管による通気性の改善は、管を中心に半径30cm程度であったことから、堆積物に対して暗渠管を60cm〜1m間隔に設置するのがよい。
2. 暗渠管の埋設により堆積物中心部の通気性が確保されることから、堆肥化装置や作業機械のない小規模農家では、切り返しの回数を減らしたり、間隔を伸ばすことができ、省力化する。
3. この暗渠管は引っ張る力には弱く、バケットローダーなど機械で作業する場合は無理に引っ張ると網目が裂けてしまうので注意する。


[具体的データ]

写真1 使用した暗渠管(左)と埋設した暗渠管開口部から出る水蒸気(右)      図1  暗渠管の施工方法
表1  堆積物の部位ごとの最高温度と最高温度の観測日 表2  堆積物の物理性状
図2  堆積物の温度推移(実線;暗渠管あり、点線;暗渠管なし)

[その他]
研究課題名:暗渠管を利用した省力型の簡易堆肥化技術の開発
予算区分:県単
研究期間:2002〜2005年度
研究担当者:田邊眞、川村英輔、加藤博美、齋藤直美、青木稔

目次へ戻る