牛ふんオガクズ堆肥の作物生育阻害及び水面での沈降性の検証


[要約]
オガクズに適当なコマツナ発芽試験の抽出条件は、乾物当たり10倍の温湯による抽出である。オガクズは、破砕直後よりも時間をおいた方が、発芽への影響は少なくなる。オガクズで調整した牛ふん堆肥は、一次発酵により易分解性有機物と作物生育阻害因子を除去すれば発芽への影響はみられない。牛ふんオガクズは、10aの水田へ10t施用しても5日間で沈降する。

[キーワード]牛ふん堆肥、オガクズ、発芽試験

[担当]栃木畜試・畜産技術部・畜産環境研究室
[代表連絡先]電話:028-677-0015
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(畜産環境)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
  オガクズは敷料や副資材などに利用され、畜産農家にとって非常に有用な資材の一つであり、オガクズで調整した家畜ふん堆肥の生産量も多い。しかし、オガクズ堆肥を敬遠する耕種農家も多いという現実もあり、敬遠する理由のほとんどは風評や未熟な堆肥に由来する障害である。そこで、オガクズが本当に作物へ影響を及ぼすのか、十分に堆肥化した牛ふんオガクズ堆肥は作物へ影響を及ぼすのか、水田に施用した時にオガクズが長期間浮いているのかについて調査し、問題ないことを示すことで堆肥の流通促進に資する。

[成果の内容・特徴]
1. オガクズに適当なコマツナ発芽試験法は、乾物当たり10倍の60℃温湯で抽出を行うと、発芽指数は約50%で3反復のレンジも小さかったことから、乾物当たり10倍の温湯による抽出が適当である(図1)。
2. オガクズを30Lポリプロピレン製コンテナで保管し毎月発芽試験を行った。発芽試験の方法は、堆肥に60℃の温湯を加え、30分振盪し抽出液を採取し、コマツナ種子を50粒置いたシャーレに抽出液を10ml注いだ。この時、対照として純水10mlを入れたものを用意し、対照区で発芽した数に対する割合を調査した。その結果、試験開始時の発芽指数は64%だったが、8か月後には99%まで上昇した(図2)。
3. 乳牛ふん尿にオガクズを混合して水分70%に調整し、毎月1回切り返しを行って6か月間堆肥化させ、1か月毎の発芽指数の変化を調査したところ、開始直後の発芽指数は23%と低かったが、堆肥化が進むにつれて上昇し、6か月後は約130%になった。この時、有機物分解率も約35%で落ち着いたことから、一次発酵は終了したと推測される(図3)。これより、すでに報告されているように堆肥化処理により発芽への影響は消失した。
4. 上記「3」で6か月間堆肥化した牛ふんオガクズ堆肥、対照としてオガクズを、水田10a当たり10t施用を想定し、それぞれ水田から採取した土に10%(重量比)混合して、コンテナに入れて水をはりオガクズが浮いている面積を調査した結果、牛ふんオガクズ堆肥は水を入れ翌日まではオガクズが浮いていたが、5日目にはほとんど沈んでその後は浮かなかった。オガクズは水を入れて全て沈むまでに19日かかり、その後は浮かなかった。また、代掻きを想定しかき混ぜたところ、オガクズ堆肥の方が早く沈んだ。(図4)。

[成果の活用面・留意点]
1. オガクズ堆肥に限らず、充分な期間堆肥化させ作物への悪影響をなくす必要がある。
2. オガクズ堆肥は十分に堆肥化すれば問題ないことを畜産農家自らが耕種農家へ啓蒙し、堆肥の流通利用を促進する。


[具体的データ]

図1 抽出濃度が発芽に及ぼす影響 図2 オガクズの経時的な発芽指数の変化
図3 オガクズ堆肥の堆肥化に伴う変化
図4 コンテナ水田におけるオガクズの沈降性

[その他]
研究課題名:作物・土壌に配慮した家畜ふん堆肥生産技術の確立
予算区分:県単
研究期間:2004〜2006年度
研究担当者:s正人、脇阪浩、神辺佳弘
発表論文等:sら(2007)栃木畜試研究報告22:15-39

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