土着天敵とナギナタガヤ草生栽培によるミカンハダニの減農薬防除体系


[要約]
ナギナタガヤによるウンシュウミカン園の草生栽培はミカンハダニの土着天敵ミヤコカブリダニを保護し、本天敵に影響の小さい農薬を使用することで、ダニ剤と除草剤を削減でき、慣行防除に対し農薬数が26%、資材費が28%、労働時間が15%削減される。

[キーワード]ウンシュウミカン、ミカンハダニ、土着天敵、ミヤコカブリダニ、ナギナタガヤ草生栽培

[担当]静岡農試・土着天敵プロジェクトスタッフ
[代表連絡先]電話:0543-34-4850(静岡柑試)
[区分]関東東海北陸農業・果樹
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
  ウンシュウミカンではミカンハダニの防除が年間5回必要とされ、ダニ剤の価格が高いことから、基幹病害虫防除費に占めるハダニ防除費の割合は40%に達する。近年、静岡県の西部や中部地区のウンシュウミカン園ではハダニ類の土着天敵であるミヤコカブリダニが発生していることが明らかとなった。そこで、この天敵の働きを強める技術を開発し、ミカンハダニの防除回数を削減する防除体系を確立する。

[成果の内容・特徴]
1. 殺ダニ剤および殺虫剤は、ミヤコカブリダニに対する影響評価から2群に分けられる(表1)。なお、殺菌剤は全般的に本天敵に対する影響が小さい。
2. 図1に示したナギナタガヤ草生栽培とミヤコカブリダニに影響の小さい農薬を組み合わせた減農薬防除体系を現地ほ場で実施した結果、7〜8月にミヤコカブリダニが急増し、ミカンハダニの発生は慣行防除体系と同等に推移した(図2)。
3. 図1の減農薬防除体系は、慣行防除体系に対してハダニ防除を3回、除草剤散布を2回削減でき、延べ使用農薬数を26%、資材費を28%、労働時間を15%削減できる(表2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 本成果はミヤコカブリダニが発生しやすいウンシュウミカン園に適応できる。
2. 春、ナギナタガヤはミヤコカブリダニの生息場所となり、草生園では本天敵の発生が早まる。新植園等の植生の貧弱なほ場ではナギナタガヤ草生栽培を行い、天敵保護に努める。
3. 5〜9月、ミヤコカブリダニに対して影響の大きい農薬の使用を避ける(表1)。
4. 春のハダニ増加を抑制するため、冬季または春季にマシン油乳剤を必ず散布する。
5. ミカンハダニの発生はほ場によって異なるため、定期的な観察を行う。ハダニによる被害が懸念される場合はミヤコカブリダニに影響の小さい殺ダニ剤を使用する(表1)。なお、殺ダニ剤の効果が低下している場合があるため、薬剤選定の際に注意する。
6. 樹冠下の草は、夏季にゴマダラカミキリの産卵を助長する恐れがあるため、春先に樹冠下に除草剤を処理する。


[具体的データ]

表1 ミヤコカブリダニに対する農薬aの影響評価
図1 ナギナタガヤ草生栽培のミヤコカブリダニ保護によるミカンハダニの減農薬防除体系のモデル
図2 ナギナタガヤ草生栽培およびカブリダニに影響の小さい薬剤の防除体系(減農薬区)と清耕栽培および現地慣行薬剤の防除体系(慣行区)におけるミカンハダニおよびカブリダニの発生消長 表2 土着天敵を活用した減農薬防除および慣行防除における10a当りコストの比較a

[その他]
研究課題名:土着天敵の活用による減農薬防除技術の開発
予算区分:県単
研究期間:2004〜2006年度
研究担当者:片山晴喜、多々良明夫、土井  誠、金子修治

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