モモの根域制限栽培における育苗マットを利用した細根更新法


[要約]
モモの根域制限栽培において、11月にポットの培養土上面に育苗マットを敷いて堆肥を施し、1年後に育苗マット上の細根を毎年全量更新することにより、樹勢低下が認められる10年生以上の樹でも樹勢が維持され、10a当り2,000kg程度の収量が得られる。

[キーワード]モモ、根域制限、育苗マット、細根更新、樹勢維持

[担当]群馬農技セ・生産技術部・果樹グループ
[代表連絡先]電話:0270-30-7799
[区分]関東東海北陸農業・果樹
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
  モモの根域制限栽培において問題となる樹勢衰弱は、ポット内の根詰まりが原因と考えられる。そこで、樹勢維持を図るためにポットの培養土上面に育苗マットを敷いて堆肥を施し、細根を養成して育苗マット上の細根を簡易に更新できる方法を開発する。

[成果の内容・特徴]
1. ポリエチレンネットと不織布を利用したポットによる根域制限栽培(培養土容量250リットル/樹)において、11月にポットの培養土上面に主幹をはさんで5cmの間隔をあけ、2枚の育苗マット(底面給水用不織布シート)を敷き、その上に牛糞堆肥を60リットル/樹施し、翌年の同時期に育苗マット上の堆肥内に伸びた細根を、育苗マットごとはぎ取ることで全量断根し更新する(図1)。かん水は、堆肥の上からスプレー方式で行い、生育期間中40リットル/樹/日を散水し細根を養成する。休眠期でもマット上の堆肥が乾燥しないようにかん水を行う。
2. 10a換算(列間5m、株間3m、10a当り57本)収量は、育苗マット上の細根を毎年全量更新することにより、細根更新を行わない無処理に比べ、処理後5年平均で10%程度増加し、2,000kg/10a程度が得られる(図2)。
3. 糖度は、育苗マット上の細根更新量の違いによる差はない。根域制限栽培では平均糖度が14.7%を超え、露地栽培と比較して高く食味良好である(図3)。
4. 生育は、育苗マット上の細根を全量更新することにより、細根更新を行わない無処理に比べて、総新梢長が長く、樹勢が維持できる(図4)。
5. 育苗マットを利用した細根更新に要する作業時間は、1.5時間/10a、資材費は48,000円/10aであり、育苗マットは5年程度連続して利用できる(データ略)。

[成果の活用面・留意点]
1. 樹勢低下が認められる10年生以上の樹で適用し、育苗マット上に施用する堆肥は十分腐熟・分解したものを用いる。
2. 成木の肥料は、細根更新時に育苗マット上の堆肥表面に菜種油粕(N5.3%,P2.0%,K1.0%・600g/樹)、カキ殻粉末(N0.3%,P0.3%,K0.2%・600g/樹)、魚粕(N7.0%,P5.0%・800g/樹)、有機化成(N10.0%,P8.0%,K10.0%・500g/樹)を施す。
3. 本成果は「川中島白桃」18年生(2006年次)を用いたものである。


[具体的データ]

図1 育苗マットを利用した細根更新法
図2 細根更新法と10a 換算収量の推移 図3 細根更新法と果実糖度の推移
図4 細根更新法と総新梢長の推移

[その他]
研究課題名:長期安定生産が可能なモモ根域制限栽培法の確立
予算区分:県単
研究期間:2003〜2006年度
研究担当者:平井一幸、佐藤正義

目次へ戻る